<シン・うるうるマン:札幌北・鈴木啓太一塁手(3年)>

サングラスの夏が終わった。3打数無安打。道内屈指の進学校、札幌北の68年ぶり勝利を引き寄せることはできなかった。1年秋には部員6人。人数不足で助っ人を加え参戦したこともあったが、最後に地区予選を突破し南大会出場を果たした。鈴木は「ここまで来られたことが大きい。この負けがすべての終わりじゃない。たくさんのものを、後輩に残せた」と達成感をにじませた。

地区開幕前の6月中旬、守備練習中に、ボールから目を離した瞬間、けん制球が左目を直撃した。「直後は左だけ真っ暗。みんなには冷静を装っていたけどショックだった」。病院で検査を受けると鼻や目の周りが4カ所骨折していた。数日後に視力が回復も、明るさの調整ができず「曇りの日でも真っ白に見えたり」。特別に申請してサングラスを着用し地区予選から出場できたが、8打数無安打と感覚は戻らなかった。

南大会前は打撃だけサングラスを外し練習。「練習では良かったのですが実戦はそう簡単じゃないと分かった」。この日は打順を4番から7番に下げ臨んだが、快音は響かなかった。

受験勉強にシフトチェンジする。第一志望は東京学芸大。「野球はひと区切りと思っていたけど続けるつもり。教師になって高校野球の指導者になれたら」。未来への視界はもう、澄み切っている。【永野高輔】