<全国高校野球選手権:愛工大名電5-2明豊>◇15日◇3回戦◇

明豊の西村元希(げんき)外野手(2年)は、衝撃の過去を乗り越えて甲子園の土を踏んだ。

小6の時、交通事故にあった。夏休みの序盤。友人と図書館で勉強し、練習に向かう途中だった。信号のない十字路で車と衝突。西村は車体の下敷きになった。一歩間違えれば命の危険もあった。マフラー付近の熱で左足首も大やけど。太ももの皮膚を左足首に移植する大手術も行った。「夏休みが終わるまではずっと入院をしていました。でも、入院が終わってからも野球ができない期間は3~4カ月。大ケガでした」。確かな記憶もない。それでも「気づいたら車の下敷きでした」と明かす。

兄太陽さんは、昨夏に宮崎商の一員として甲子園出場を決めたが、新型コロナ集団感染により出場を辞退した。兄の無念も背負い、「甲子園でできることは当たり前じゃない。感謝しながらプレーしています」と話していた。この日の愛工大名電戦の4回には、一時1点差に迫る中犠飛。苦労人の一打にベンチも右翼スタンドも沸いた。

苦難を乗り越えた先に、最高の景色があった。西村は2年生。不死身の球児は、来年も聖地を沸かせてみせる。【只松憲】