東北(宮城1位)が計3発の「アーチ攻勢」で12年ぶりの決勝進出を果たした。

聖光学院(福島1位)に6-2で逆転勝ち。2-2で迎えた8回1死一塁。1番金子和志内野手(2年)が決勝2ランを放ち、主役の座をつかんだ。

大仕事を果たした金子は歓喜の渦に吸い込まれていった。喜びを爆発させる東北ナイン。右手人さし指を突き上げ、ダイヤモンドを周回。ベンチへ戻ると、仲間と激しいハイタッチを交わした。「勝負の命運」を分けた値千金の決勝弾。興奮はピークに達していた。「みんなが喜んでいた。最高だった」。

2-2の同点で迎えた8回1死一塁。「つなぐ意識だった」。決して「1発」を狙ってたわけではなかった。初球だ。内角直球を振り抜く。打球は左翼ポール際へ飛び込んだ。この試合、チーム3本目の本塁打。アーチ攻勢で終盤までもつれた接戦を制した。「真っすぐを狙っていた。1、2、3のタイミングで捉えた」としたり顔で振り返った。

“志願の1打席”だった。8回の守備で相手走者と交錯。しばらく起き上がることができなかった。その影響で打席に入る前、佐藤洋監督(60)は金子にこう言ったという。「(バントで)送っとくか?」。だが、金子の返答は「打たせてください」。3回の第2打席では左前打を放っており、打つ自信があった。指揮官はその心意気にかけた。「好きなようにしてこい!」。一振りで最高の結果を残し、期待に応えてみせた。

10年以来12年ぶりとなる秋の「東北頂点」に王手をかけた。夏の甲子園王者で県勢対決となる仙台育英とのファイナル決戦に臨む。「目の前の一戦にこだわりながら自分のできることをやって優勝したい」と決意をにじませた。16年夏以来遠ざかる夢舞台へ弾みをつけるためにも「東北王者」の称号獲得を目指す。【佐藤究】

◆聖光学院 優勝校が挑める神宮大会を逃し、ナインはグラウンドで悔し涙を浮かべた。1点を追う4回1死二塁から宮一柊之介外野手(2年)の左前適時打で同点とし、投手戦に突入。終盤まで競り合ったが、8回に4点を勝ち越された。2安打を放った高中一樹主将(2年)は「3年生は(夏の)大会後も自分たちと一緒に戦ってくれた。3年生の分も神宮に行きたかった」。

悔しさを晴らすべく、自身最後の春夏に向け、努力を重ねていく。「冬の間は後悔しないような日々を過ごしたい」と前を向いた。