<高校野球大阪大会:履正社8-4関大北陽>◇29日◇準決勝◇大阪シティ信用金庫スタジアム

高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。

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24年ぶりの夏の聖地は夢に終わった。9回2死一塁。関大北陽の主将、石田隆斗(りゅうと)内野手(3年)は三振に倒れ、最後の打者になった。辻本忠監督(46)は「最後(の打者が)石田だったが、チームとして悔いはないと思う」とねぎらった。

指揮官は石田を「逃げない主将」と言う。チームは「全国制覇」という目標を掲げたが、大阪桐蔭、履正社の2強が立ちはだかった。辻本監督は「(全国制覇するための)要求をするので、足りない部分を全て石田にぶつけてきた」。その苦悩に主将として、立ち向かったが、本当は逃げたかった。「同じ方向を向いてくれなかったのが、一番しんどかったです」と苦悩の日々を明かした。それでも「つらい顔を見せずにやってきました」。最後まで逃げずにチームを引っ張り続けた。

1回裏に自身の失策から先制を許した。逆境から逃げない姿勢が表れたのは3回の打席。2点を追う1死満塁。「攻める気持ちは100%」と強気でバットを振り、右翼へ反撃のタイムリー。この回4得点で一時は逆転に成功した。石田は大学でも野球を続ける予定だ。「1年から自分が主力と思いながらプレーする選手になりたい」。次のステージでも逃げずに挑戦する。【奥谷爽】