初出場の浜松開誠館が北海(南北海道)に2-3でサヨナラ負けを喫し、18年の常葉大菊川以来となる県勢5年ぶりの16強進出を逃した。

2-2で迎えた9回裏1死二塁、エース近藤愛斗(3年)が決勝打を許して力尽きた。全国最多40度目出場の伝統校に接戦を演じたが、惜敗。創部26年目で初めて挑んだ聖地・甲子園での戦いは、2回戦で終わりを告げた。

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金属音とともに歓声が甲子園を包んだ。2-2の9回裏。2番手でマウンドに上がった近藤が、1死二塁のピンチを背負った。カウント2-2。内角高めに投げ込んだ渾身(こんしん)の直球を捉えられた。「絶対に抑えて流れを引きよせる」。そんなエースの思いは届かず、打球は左翼手の頭上を越えていった。

ぼうぜんと立ち尽くすナイン。近藤は「新妻(恭介)の構えたミットに納得の1球を投げられた。打った相手が上だった。ただ、この仲間でもう野球ができなくなる。そう思うと寂しい…」と涙を流した。先月16日に迎えた静岡大会初戦から29日。全力で駆け抜けてきた夏が終わった。

持ち味は見せた。初回、深谷哲平外野手(3年)が代名詞の「フルスイング」で右越え二塁打。先発の広崎漣外野手(3年)は2失点の力投に右前打と“二刀流”で奮闘した。4番本多駿外野手(3年)も初戦無安打の不振を乗り越え、2安打1打点。聖地で躍動した教え子たちの姿に、佐野心監督(56)も「このチームで最後に素晴らしい試合ができた。至福の時間だった」と目を細めた。

ただ、勝てなかった。指揮官は「全国上位10校ぐらいに入るチームとの差や、どうすればその差が埋まるのかも何となくわかった気がする。財産として持ち帰りたい」と前を向いた。吉松礼翔主将(3年)は「2勝、そして優勝を目指してほしい」と思いを託した。創部26年目でつかんだ甲子園初勝利。そして「全国」を肌で感じた経験が、次世代への確かな1歩となる。【前田和哉】