中学1年の夏に憧れた星稜(石川)のエースへと近づく。「青森山田 センバツ1勝、その先の日本一へ」第2回は昨秋の東北大会決勝で同県のライバル・八戸学院光星を相手にノーヒットノーランを達成した桜田朔投手(新3年)。憧れの投手はヤクルト奥川恭伸(22)。奥川が2019年夏の甲子園で準優勝投手となったプレーはYouTubeで穴が開くほど見た。この春、憧れの存在が躍動したマウンドに桜田が立つ。【取材・構成=濱本神威】

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あの夏に見た奥川の勇姿、特に19年夏の甲子園3回戦、智弁和歌山との延長14回タイブレークの激闘(4○1)や履正社(大阪、3●5)との決勝戦での粘投は今でも記憶に残っている。桜田は「ボールの質、キレはトップクラス。何よりエースとしてチームを引っ張る姿、夏場の熱い中で足をつってでも自分が投げようという強い気持ち。そういうところに憧れました」。甲子園の映像は何度も見返した。投球前に奥川がグラブをたたくしぐさを自身も取り入れ、今でも続けている。「それがなきゃ、もう投げづらいぐらいの感じになってしまいました」という。

桜田の理想のエース像を「奥川」以外の言葉で表すなら、「エースだったら負けてはいけないですし、もし自分がピンチでもあきらめちゃいけない。そういう部分ではピッチャーのお手本、チームのお手本になるような存在」だという。中学の時は青森山田リトルシニアで背番号1をつけ、日本一に輝いた。だが「中学校の時は『自分が、自分が』という感じでした」。決して理想のエースとは言えなかった。高校に入り「細かいリリーフ、短いイニングでもチームのために」という役割を知った。秋は背番号10をつけて戦った。「10番をつけさせてもらって『自分が』というより、チームが勝つためにどれぐらい貢献できるか、渡された役目を果たすということをやっていきたい」と考え方が変化した。まだ「チームのお手本」になっているとは思っていないが、いつかはそうなりたいと考えている。今は自身の役目と向き合い、成長する段階だ。

センバツ開幕が迫り、「甲子園はまだ行ったこともないので、すごいプレッシャーです」と語るが、「奥川が立っていたマウンドに立てるかもしれない」と聞くと、「いや、めちゃめちゃそれが今楽しみで。『早く試合をやりたいな』って思っています」と、目がキラキラ輝いた。チームの目標は「春1勝」はもちろん、その先の「日本一」だ。そして桜田にはもう1つの野望がある。「(智弁和歌山戦は)『すごいな…』と本当に思った。あの投球を『高校3年生までには超えたい』とずっと思っている」。目標への道程で、憧れの存在を超えてみせる。

◆桜田朔(さくらだ・さく)2006年(平18)4月18日生まれ。青森県五所川原市出身。三輪小2年時に青森ジャイアンツで野球をはじめ、青森山田中では青森山田リトルシニアでプレー。21年夏に、同シニアでエースナンバーを背負い、東北勢の中学球界初となる日本一に貢献した。184センチ、81キロ。右投げ右打ち。