<高校野球京都大会>◇18日◇4回戦

 京都大会で、銀仁朗2世の今夏2号が幻の1発になった。龍谷大平安が東山戦で序盤から先行したが、東山の反撃中の6回表降雨ノーゲーム。2年生主砲の高橋大樹(ひろき)捕手が放った高校通算24号も幻となったが、先輩の西武銀仁朗を超えると言われる打力を見せつけた。

 拍子抜けするほどかわいい言葉を、かわいい声でつぶやいていた。「振った瞬間『飛んでけ~』って祈ってるんです」。高橋が祈る必要などみじんもなかった。2-0の3回1死、左中間芝生席に大きな放物線を描いた高校通算24号は、打った瞬間、だれもが柵越えを確信。降雨ノーゲームで“打ち直し”になっても、スーパー2年生の打力を十分証明する一打だった。

 昨秋からベンチ入りし、夏デビューの京都大会初戦、13日の2回戦・京都農芸戦で夏1号2ラン。だが3回戦・京都共栄学園戦は無安打で、チームも1-0の大苦戦。原田英彦監督(51)から「体が開きっぱなしや」と叱られた。4番の不振はチームの危機につながることを痛感。軸足に体重を残せるよう修正し、幻でも「夏2号」の結果を出した。

 西武銀仁朗を育てた原田監督が「守りでは銀仁朗だが、遠くに飛ばす打力ははるかに上回る」と評する。かつて高橋の打球が球場の中堅バックスクリーンにスライスしながら飛び込んだのを見て、仰天した。「手首が強い。前でもう一つ押し込める。だからあんな打球を打てる」とほれ直した。

 中京大陸上部のアスリートだった両親から運動神経抜群の体を受け継いだ。大学時代は十種競技をやっていた母寿子さん(45)は、高橋の幼いころから趣味でテニス教室通い。寿子さんを待ちながら、高橋もラケットでテニスボールを打っていた。「それが手首の強化につながったのかも」。思わぬことが実になった。

 2年ぶりの代表と銀仁朗が持つ1大会4本塁打の京都記録を目指す。高橋大樹という名前も目標も堂々としていても、素顔はあどけない。この日も「ホームランがなくなって運が悪いなと思ったけど、それよりピッチャーが気の毒で」と雨でぬかるむマウンドで苦心の投球を続けた坂口隼斗(3年)を心配した。先輩への気遣いがあふれていた。【堀まどか】