<高校野球静岡大会:吉原工7-6掛川東>◇21日◇2回戦

 75時間ドラマには劇的な結末が待っていた。掛川東-吉原工の再試合は、吉原工が逆転サヨナラ勝ちで3回戦に進出した。18日の延長15回引き分けから台風6号の影響で2日延期して行われた一戦。この日もリードを許し追い掛ける展開となったが、1点差の9回裏に2死二、三塁から上打田内(かみうったない)昇内野手(3年)が左翼線に2点適時打を放った。1試合目の開始から実に74時間52分後。熱戦に決着がついた。

 ヒーローはどこまでも強気だった。5-6で迎えた9回裏、2死二、三塁。上打田内に重圧などない。「ここで決めてしまおうと思った」。2ボール1ストライクからの4球目、インコースの直球を振り抜く。「打った瞬間に転んでてよく分からなかった」打球は左翼線を破り、2者が生還する逆転サヨナラ打となった。18日の午後0時22分に始まった戦いは、3日後の午後3時14分、24イニングにおよんだ末、終止符が打たれた。

 燃える理由があった。この日のスタメンに上打田内の名前はなかった。大勝良則監督(44)は相手先発を左腕と読み「(フル出場の)この前元気がなくなったので、右の速球投手向けにとっておいた」と、得意の投手相手に勝負強さを発揮させるプランだったと説明。6回裏に代走で登場すると、その後2打数2安打。指揮官の期待に満点回答を出した。

 吉原工の粘り強さを象徴する一打だった。18日の1試合目でも、チームは9回裏に2点差を追い付き引き分けに持ち込んだ。勢いそのままに再試合を迎えたいところだったが、台風6号のため2日連続で延期。体育館や校舎内を使って体を動かす程度しか練習できない中で調子を維持した。

 この日も1点を争う展開で、8回には2点差を追い付いた。ところが、直後の9回表に、無死二塁からの犠打で捕手が前に出て空いたホームを二塁走者に突かれ勝ち越された。流れを失いかねないミス。それでも、めげないナインは大逆転劇を見せた。

 上打田内は「2点差くらいならOKです」と、チームの精神力に胸を張る。今日22日の静岡市立戦も「先発で出て、コールドで勝つつもりでガンガン攻めていく」と強気に語った。6年ぶりの3回戦で吉原工が新たなドラマを演じる。【石原正二郎】