<全国高校野球選手権:如水館3-2関商工>◇8日◇1回戦

 広島代表の如水館が初登場し、関商工(岐阜)に延長13回、3-2でサヨナラ勝ちした。4回から救援した浜田大貴投手(3年)が10イニングを10三振でゼロ封。最後は6番木村昂平捕手(2年)が、左前適時打で夏10年ぶりの白星をもぎ取った。次戦の相手は東大阪大柏原(大阪)。大会最年長の迫田穆成(よしあき)監督(72)とともに快進撃を続ける。

 エース左腕が劇的勝利を演出した。同点の4回から登板した浜田はマウンドで球場全体を見回した。「全部見えた」と冷静に確認。ここから延長13回まで投げ抜いた。関商工打線に許した安打は4。10回10Kゼロ封の121球を「自分で言うのも何ですが、自分が頑張った」と笑った。絶対的な立場に成長したからこそ、言い切れた。

 09年8月11日、浜田の初甲子園はわずか14球で終わった。甲子園大会史上初の同一カード2試合連続ノーゲームからの3日連続の顔合わせで、高知に初戦敗退した。4番手登板し、1死も取れずに傷口を広げて降板。大会後、父晃さん(47)に「リベンジの舞台へ」と書かれたグラブをねだった。あの時の悔しさを、成長の糧とした。

 浜田は瀬戸内海に面した愛媛・宇和島市で中学までを過ごした。この日、同市内の病院のベッドで祖父良貞さん(72)が孫の活躍を見守っていた。帰省時には、自分と同い年の迫田監督の話題で盛り上がった。今年1月14日に脳梗塞で倒れると、居ても立ってもいられない浜田は、翌日に飛んで帰ってきたという。そんな孫の甲子園での勇姿に、病床でうれし涙を流していた。

 浜田は「しんどかったが、絶対に点を取られないようにと。ただ、甲子園を1回経験しているのが大きかった」と話した。迫田監督も「浜田はこの2年間で成長したよ。今日はいろいろと勉強させてもらった」と、10年ぶりの夏勝利に感慨深げだ。

 2年前は一塁側スタンドで声をからした樋口主将も「粘って勝てた」と手応えを口にした。1年生4番の島崎は4安打2打点と打ちまくり「これでまた先輩たちと野球が出来る」と喜んだ。如水館の成長曲線は、止まらない。【佐藤貴洋】