<高校野球福島大会:小高工4-3清陵情報>◇17日◇2回戦◇県営あづま

 2年連続4強の小高工が延長11回、門馬陵投手(3年)のタイムリーで清陵情報にサヨナラ勝ち。福島第1原発事故の影響を強く受ける相双地区で唯一の初戦突破を決めた。

 小高工は苦しんでも粘り強かった。延長11回裏、無死三塁から相手の清陵情報は満塁策。打席には3打数無安打の門馬が向かう。峯岸聡監督(32)は「スクイズにするか、打つか」と確認した。「打ちたいです」と即答した門馬は、2球目の直球を強振。打球が三遊間を抜けたのを確認すると右拳を握り締めた。試合後「ほっとした」と振り返った門馬に続き、夏初勝利の峯岸監督も「勝たせてやれてよかった」と胸をなで下ろした。

 厳しい環境で戦ってきた“仲間”のためにも負けられなかった。相双地区は16日までに小高工以外の6チームが初戦敗退。試合前夜、相馬東の佐久間魁投手(3年)から「俺たちの分も勝てよ」と門馬にメールが届いた。中村一中のチームメートの激励に応えて11回130球の力投。11安打されても3失点で踏ん張った。

 震災でグラウンドを失った。1年4カ月たった今も変わらない。昨年は3年生が二本松工、下級生は相馬東とサテライト先が分かれていた。練習場探しに奔走し、一緒にできたのは週末だけでも2年連続の夏4強まで上り詰めた。今年はその快進撃を見た1年生が22人入部。部員不足に苦しむ地区の中では圧倒的に多く、峯岸監督も「本当にありがたい」と感謝する。

 現在は土日は遠征に出かけ、週4日は相馬農と原町のグラウンドで練習する。しかし「車に当ててしまうので思い切り打てない」と門馬。練習時間は相手に合わせるため、昨年より短くなったという。それでも4月に仮設校舎が相馬市内に建ち、毎日一緒に生活できるようになった。「先輩を超えて甲子園に行きたい」。チームの思いも1つになっている。【鹿野雄太】

 ◆小高工

 南相馬市小高区の県立高校。福島第1原発から半径20キロ圏内にあるため、全校避難を余儀なくされた。昨年は5校のサテライト先で授業を実施。今年4月から南相馬市サッカー場内に建てられた仮設校舎に集約された。相双地区には13の高校がある。今大会に出場したのは双葉、原町、相馬農の3校で結成された連合チーム「相双福島」を含めた7チーム。