<高校野球宮城大会:一迫商4-2仙台>◇5日◇1回戦◇コボスタ宮城

 東北球児の夏が来た!

 東北6県の先陣を切って宮城大会がスタート。春8強の一迫商が、仙台を破って開幕試合を飾った。2-2の5回に相手投手の暴投で勝ち越し。7回には2番増田宏和内野手(3年)の適時二塁打で突き放した。3年生10人、1年生3人の計13人と、部の存続危機に立たされる中、みちのく1番星に輝いた。

 最後の夏になるかもしれない一迫商が、東北6県393チームの中で最速で勝ち上がった。95年秋から指揮する熊谷貞男監督(59)は、部員13人で3年生10人が抜ける秋は「出ない」と辞退を断言。春の9番から2番に抜てきされた増田は「結果を残さないと部の存続にかかわる」と、1点リードの7回に左翼越えの適時二塁打。05年センバツ出場校の誇りを開幕ゲームで示した。

 大会直前、熊谷監督は右打者2人に打撃改造を行った。4番大森翔、5番阿部隼也(ともに3年)と同じ1本足打法を2番増田は「2週間前に」、9番今野将大(3年)は「3日の木曜日に」指示されたという。右足に重心を大きく乗せ、高く上げた左足を下ろす時の体重移動で「打球が強くなった」と、増田は利点を説明する。指揮官の大胆な指導はピタリとはまり、「バットを強く振れるようになった」と話す今野は5回に中前打。勝ち越し点のきっかけになった。

 部員13人でも紅白戦をする。打者4人対守備9人や、守備力強化を目的に守備8人対打者5人など、少人数で工夫。練習量の多さには定評があり、朝4時半開始もある。授業終了後は夜9時まで。レギュラーが決まっていることで「手を抜く時がある」と熊谷監督は苦笑するが、春の県大会準々決勝で古川学園に0-8とコールド敗退後は、部の存続危機もあり選手の目の色が変わった。

 ベンチに残る人数も少なく、この日、ベンチ横のボールボーイは仙台の2選手が務めた。熊谷監督の母校でもある仙台・郡司宏貴監督(55)の、勝敗を度外視した好意だった。その中で開幕戦を飾り熊谷監督は「甲子園で勝つよりもうれしい」と言った。今後の部員増は不透明。一迫商の名を再び知らしめるには、2回戦(9日)の優勝候補・仙台育英は格好の相手になる。【久野朗】