<高校野球宮城大会:仙台高専名取6-1名取北>◇6日◇1回戦◇蔵王球場

 仙台高専名取が09年10月に宮城高専から校名変更後、夏初勝利を飾った。4回に先制して流れをつかみ、小刻みに加点。右腕エース佐藤優太(3年)は1失点完投で名取北を下した。

 忘れかけていた瞬間だった。4回1死一、二塁。9番山田悠人(2年)の中前打で、二塁走者紺野大和(3年)が先制のホームを踏む。10年宮城水産との2回戦の3回に2点を挙げて以来、チーム35イニングぶりの夏の得点。流れを呼んで、この回から8回まで毎回得点を記録した。若生一広監督(47)は「つなぐ野球で、うまく点を取ることができた。選手が頑張ってくれた」。4年間の沈黙を破り、仙台高専名取として夏1勝をつかんだ。

 4月から指揮を執る若生監督の野球経験は、小学校で少年野球をやっていた程度。「練習と試合を含めて勉強している」と話すが、練習では手のマメをつぶしながら選手にノックする。ノック上達に素振りも欠かさない。そんな指揮官の姿に、1失点完投のエース佐藤優は「それを見て、俺たちも頑張ろうという気になった」と振り返った。

 佐藤優の入学の動機は「就職に有利だと思って。野球は草野球っぽくやるつもりだった」。それが実力のある同期に刺激されて、本気になった。初戦で敗れた昨夏は背番号1をつけて完投した。この春には新監督の真摯(しんし)な姿勢にも心を打たれた。春の県大会にも出場した。「僕らは、力があるんだな」と自信もつけていた。

 4、5年生が練習を手伝う、高専ならではのサポートもある。「仙台育英と戦う」がチームの合言葉。優勝候補との一戦にはベスト8まで勝ち上がらなければならないが、先制打の山田は「育英と戦ってテレビに映りたい」と言った。仙台高専名取の夏の新しい歴史づくりは、まだまだ終わらない。【久野朗】

 ◆仙台高専名取

 1963年(昭38)、国立宮城工業高等専門学校として創立。宮城県内に2校ある高専を再編して09年10月1日に開校。旧・宮城高専を名取キャンパス、旧・仙台電波工高専を広瀬キャンパスとして使用。仙台高専広瀬も宮城大会に出場し、明日8日に初戦を迎える。名取の前身・宮城高専は09年夏に2勝しており、この日が5年ぶりの勝利。