<全国高校野球選手権:二松学舎大付7-5海星>◇15日◇2回戦

 二松学舎大付(東東京)の「西郷どん」が、ついに打った。今夏の東東京大会0本塁打だったプロ注目の6番秦匠太朗(しょうたろう)外野手(3年)が、3回に左翼席に高校通算57号ソロをたたき込み、海星(長崎)を破った。2番手で登板したルーキー左腕、大江竜聖投手(1年)は初登板初勝利を挙げた。

 気は優しくて力持ちの「西郷どん」が二松学舎大付を乗せた。4-1で迎えた3回、秦が高校通算57本目となるソロ本塁打だ。低めのチェンジアップを、自慢の怪力ですくい上げるとライナーで左翼席へ。スタンドに当たってボールがグラウンドに跳ね返ったのを見て一瞬、二塁打と勘違い。「喜びきれませんでした」と苦笑いだ。

 東東京大会は不調で本塁打0に終わった。実は左ひざの靱帯(じんたい)を痛めていた。それでも「誰にも言わないで。これで打てないと思われるのは嫌だから」と、母裕子さん(47)に口止め。ケガを治しながら、この大会へ調子を合わせてきた。

 大砲待望の1発は、初出場チームを勢いづけ、夏1勝を呼び寄せた。「すごい大会で打てて自信になります。素直にうれしい」。手に残った感触を味わいながら振り返った。

 184センチ、97キロの大きな体に、太く立派な眉とぱっちりした目。入学してすぐ市原勝人監督(49)に目を付けられ「西郷どん」と命名された。その体通りパワーは折り紙付き。ベンチプレスは95キロを5連続で上げることができ、握力は左右ともに70キロ以上。1年夏から定位置を勝ちとり、本塁打を量産してきた。

 明治維新の英雄のように豪快かつ優しさもある。宿舎では、硬さが取れないナインのため、人気アニメ映画「アナと雪の女王」の主題歌「レット・イット・ゴー」を自慢の歌声で披露。プレーだけではなく、雰囲気づくりにも気を配っている。

 今夏、夏都大会決勝10連敗の呪縛を破り、チームは新たな歴史を刻んでいる。頼れる長距離砲の復活に市原監督も「1発出て変わってくれるでしょう」と期待をかける。初出場初優勝目指して駆け上がるつもりだ。【加藤雅敏】

 ◆秦匠太朗(はた・しょうたろう)1997年(平9)1月6日生まれ。小3から赤塚アントラーズで野球を始める。東板橋シニアでは全国大会出場。好きな野球選手は清原和博氏(日刊スポーツ評論家)。高校通算57本塁打。50メートル走6秒4。遠投95メートル。184センチ、97キロ。右投げ右打ち。家族は両親、妹、祖父母。