<全国高校野球選手権:大阪桐蔭5-3明徳義塾>◇19日◇2回戦

 大阪桐蔭が夏の大会史上初の3年連続同一カードとなった明徳義塾(高知)戦を制し、3年連続で16強に進んだ。昨年の春夏甲子園メンバーが躍動。OBの西武森の愛弟子、香月一也内野手(3年)が高校通算30号の先制2ランをかければ、峯本匠(同)は7回2死満塁で超美技。昨年敗れた森らのリベンジを果たした。明徳義塾のエース岸潤一郎(3年)も9回2死から意地の2ラン。4万5000人の大観衆を最後までくぎ付けにした。

 峯本の長打に、香月が続いた。香月が捕れなかった打球を、峯本がつかんだ。12年夏、藤浪(阪神)の完封をスタンドから見届け、13年夏、森(西武)とともに悔し涙を流した春夏甲子園メンバーが打って、守って、明徳義塾との決戦をしのぎきった。

 香月が先陣を切った。1回1死。中前の当たりを二塁打にした峯本に続き、岸の内角高め直球を右越えの高校通算30号2ラン。通算19打席目の甲子園1号を「峯本がよく二塁に行ってくれた。気持ちを楽に打席に入れました。昨年明徳義塾に負けて悔しい思いをした。今年こそ自分の打撃をしようと思っていました」。優しい顔がほころんだ。

 プロ注目で、今年の大阪桐蔭の顔。6歳で兄に連れられて打撃センターに行き、生まれて初めてバットを握って80キロの球を打ち返した。そんな打撃センスの持ち主が、大阪桐蔭で森に出会った。木製バットでも金属でも同じように打てる才能は森と同じ。「森さんのような打者になりたい」とバットを振った。森から愛用の野球用具を譲り受け、甲子園の無念も受け継いだ。昨年8月17日、明徳義塾に負けたとき「来年、お前たちは勝ってくれ」と森に言われ、いっそう泣いた。「森さんのためにも明徳に勝つ」と家族にも誓った。

 だから自分に厳しかった。3連覇の大阪大会決勝後、4割6分7厘も打ちながら香月は「思うような打球を打てない。情けない」と悔し涙を流した。一方で「少しずつ状態は上がっているんです」と手応えも感じていた。この日、値千金の岸打ちで結果を出した。

 香月の先制弾を引き出した峯本は、守っても超美技を見せた。7回2死満塁。代打の切り札・田中の中前への打球に二塁の守備位置から猛然と走り、好捕。「(田中が)打った瞬間、自分の打球だと思いました」。昨夏は左翼手。今夏は二塁の名手。経験を糧に成長し、「最強TOIN」を取り戻した。【堀まどか】

 ◆香月一也(かつき・かずや)1996年(平8)4月16日、福岡県生まれ。頃末小1年から猪熊ベアーズで投手として野球を始め、水巻中では八幡中央ボーイズに所属。大阪桐蔭では1年秋から三塁手でベンチ入り。50メートル走6秒5。遠投110メートル。175センチ、82キロ。右投げ左打ち。