<高校野球宮城大会:上沼11-9仙台向山>◇5日◇2回戦

 目指せ、甲子園!

 東北6県のトップを切って、宮城の夏が幕を開けた。開幕戦では上沼が11-9で仙台向山に競り勝ち、3年ぶりの初戦突破。175球の熱投で完投したエース粕谷顕太(2年)ら、ナインは満身創痍(そうい)になりながら、入院中にもかかわらずベンチで指揮を執った赤井沢徹監督(28)に、白星をプレゼントした。

 チーム全体が、ボロボロになりながらつかんだ勝利だ。両軍合わせて23安打が飛び交う2時間57分に及んだ開幕戦。最後は2点差に詰め寄られるも、1人で投げ抜いた粕谷は「監督さんのためにも、なんとしても勝ちたかった」と語った。赤井沢監督は6月27日から尿管結石で入院中。この日は、特別に外出許可を得てベンチ入りした。

 痛みに耐えて指揮を執った監督同様、ナインも体を張って戦った。15安打を浴びた粕谷は、試合序盤から両足ふくらはぎに張りを覚えたが「気持ちが入っていました」と、最後までマウンドに立ち続けた。打線も“痛み”を分かち合う。9回には、セーフティーバントを試みた菊地駿外野手(2年)が一塁手と交錯。左肩と左足を負傷して退場した。直後には小野寺晃也捕手(3年)が頭部死球を受けながらも、気合で一塁に向かった。赤井沢監督は「みんなが心を1つにして戦ってくれた。感謝です」と頭を下げた。

 逆境を力に変えた。指揮官不在の中、千葉卓登主将(3年)がナインを集め、監督の掲げる機動力野球の徹底を確認。1日をバント練習だけに費やした日もあった。この日は3犠打5盗塁で好機をつくり、仙台向山より7本も少ない8安打で11得点。効率抜群の攻撃で加点した。その千葉も持病の腰痛をおしての出場だった。

 試合後、赤井沢監督は仙台市内の病院に戻った。就任5年目で、夏は05年以来となる白星を贈られたが、8日の2回戦は強豪・仙台育英戦だけに「いつまでも入院していられません」。次は大番狂わせで快気祝いだ。【由本裕貴】