<高校野球佐賀大会:鳥栖工2-1佐賀北>◇12日◇3回戦

 夏の甲子園連覇を狙った佐賀北が鳥栖工に1-2の惜敗で涙をのんだ。「全員で優勝旗を返す」ことを目標にしてきたが、百崎敏克監督は「ようやく終わった感じ。一から出直します」と、再スタートを誓った。

 この夏2度目の「がばい旋風」は、起こらなかった。佐賀北は1点を追う9回裏、2死二塁まで走者を進めたが、11回サヨナラ勝ちした初戦の再現はならず、全国連覇の夢は絶たれた。6人残るVメンバーの1人、田中亮主将(3年)は「自分たちのチームでも、甲子園へ行きたかった」と目をうるませた。

 守りのミスから敗退した。7回表だった。三塁の悪送球と、投手の犠打野選で無死一、三塁。4回途中から登板した森田謙輔(3年)は2死一、三塁で相手4番に右中間二塁打を打たれ、2点を失った。佐賀北もその裏、甲子園メンバーの5番新川(にいかわ)勝政(3年)の投手内野安打を足がかりに、2死満塁から1番田中亮が死球を受け、押し出しで1点を返したが、反撃は続かなかった。百崎敏克監督(52)は「守備も乱れて、打つ方も(4安打と)相手投手にうまく抑えられた結果。森田は何度もピンチを救ってくれた」と、春までのエースをかばった。

 田中亮は昨夏の甲子園2回戦(対宇治山田商)5回に失策。自身の同点打で延長15回引き分け再試合に持ち込んだ後、熱中症で救護室に運ばれた。母敏子さん(46)は昨夏、佐賀から甲子園の応援に、日帰り4度を含む5往復した。「大変だったけど、楽しかった。あんたは頂点も、どん底も知って、一番良い人生経験になるよ」と、主将になって最初の敗戦に落ち込む息子を励ました。

 劇的な優勝で、全国の注目を浴び続けた325日間。「夏は1つ勝つのも大変なのに、連覇なんて、とんでもない。負けたのは残念だが、優勝を引きずってきた1年が、ようやく終わった感じ。一から出直します」と、百崎監督は重い荷物を下ろした。「全員で甲子園に優勝旗を還す」と連続出場を誓い、この日も1打点と奮闘した田中亮は、国立大文系志望で、教師として高校野球の指導をするのが夢だ。今春卒業した昨夏のエース久保貴大(筑波大1年)らに続き「がばいナイン」全員が、新たな道に進む時が来た。