<全国高校野球選手権:成田6-5北大津>◇17日◇3回戦

 成田(千葉)の「唐川2世」中川諒投手(3年)が、3試合連続完投で58年ぶりの8強を決めた。北大津(滋賀)戦に先発し、7安打4奪三振5失点(自責3)と苦しんだが、同点の9回に高橋究外野手(2年)の適時二塁打で勝ち越した。

 中川が、最後の最後で意地を見せた。9回2死、9番村井を、この日最速の141キロ内角直球で二直に打ち取ると、両手に力を込め、少し控えめにほえた。8回までの最速は、1回の137キロ。球が走らず、直球は130キロ台前半がほとんどだったが「9回は真っすぐで勝負しようと思っていた。接戦だと燃えちゃう」と、9回の3人はこん身の直球で打ち取った。

 序盤、一番自信のある直球に力がなかった。3回2死一塁、3番山口に133キロ直球を左中間スタンドまで運ばれた。外角を狙った球は、ことごとくシュート回転して真ん中に入った。

 「今日は真っすぐのキレがない」と判断し、変化球主体の配球に変えた。スライダーを中心に、4回から6回までは無安打と立ち直った。内角への沈む球が苦手だと見切った右打者には、左打者用のチェンジアップをあえて多投し、打たせて取った。1回戦は14、2回戦は10個の三振を奪った。この日は4個。「今日は29点、赤点です」と苦笑いするほどの出来。三振を狙う余裕もなかったが、7回以降に味方の援護を受けるまで、耐え抜いた。

 16日、うれしい出来事があった。地元千葉のテレビ局関係者を通じ、唐川から「『唐川2世』も頑張ってください。『唐川1世』も頑張ります」とメッセージをもらった。直筆ではなく、伝言のメモだったが「そう思ってくれるのはうれしい」と励みにした。

 「毎試合、決勝戦みたい」と緊張感を楽しむ一方で、疲労の色は濃い。試合後の第一声は「疲れました」。大阪に入って、体重は3キロ減った。それでも「真っすぐのキレで勝負したい」という口癖が出る時は、自然と力が入る。千葉県勢35年ぶり、同校初の頂点は、手の届くところまできている。【今井恵太】