ヤクルト真中満監督(44)の日本一への挑戦が終わった。1勝3敗で迎えた第5戦に完敗した。今季から就任した新人監督。挑戦者の精神で昨季まで2年連続最下位だったチームをリーグ優勝に導き、日本シリーズまでけん引した。

 新人監督の挑戦が、終わった。ソフトバンクの優勝インタビューが始まると、真中監督はベンチの奥に消えた。「人の祝福は見たくないからさ」と唇をかんだ。「ピッチャーも中継ぎも打線の破壊力も圧倒的されたという感じ。まだ足りないという感じ」と、悔しさがにじみ出た。

 1勝3敗で迎えた第5戦。崖っぷちの中でも、「明日は移動日。今日はある程度ピッチャーを使っていける」と、試合前はあくまで前を向いていた。「1敗したら負けだけど、可能性がある限り最後まで戦う」と決して後ろを向くことはしなかった。

 1年間、貫いてきた信念だった。読書好きな真中監督。ビジネス書を読んでいた時に、日本地図を作った伊能忠敬の生涯が描かれていた。「この人は60歳近い時から携帯電話もない時代に地図を作ったのか。すごい挑戦だな」と引き込まれた。自然と自分の状況に近いものを感じた。「2年連続最下位といっても、1勝も出来ずに最下位だったわけじゃない」と可能性を信じた。人生の教訓は「出来ない理由を探すな」。走り続けた。

 開幕前の下馬評は低かった。それでも、選手の持つ可能性を信じ続けた。昨季まで2年連続最下位のチームから、リーグ優勝まで導いた。不可能はない、と自ら証明した1年。01年以来、14年ぶりの日本一は届かなかったが、「秋から常勝と呼ばれるチームを作っていきたい」と先を見据えた。来年またこのステージに帰ってくる。真中満の挑戦は、まだ続く。【栗田尚樹】