阪神が今季から「超大物シフト」のスカウト体制を敷くことが5日、分かった。畑山俊二球団統括スカウト補佐(51)がこれまでの担当に加え、新たに西東京地区や慶大を担当する。これまでも球団はクロスチェックでドラフト候補を複眼的にとらえてきたが、今回は春の早い段階から積極的に視察を重ねる方向だ。

 畑山統括補佐が現在の近畿、中国地区に加えて新たに慶大、高校野球の西東京を担当地区に組み入れるのには、2つの理由がある。慶大を担当することで有望選手が毎年生まれる東京6大学の常時チェックが可能になる。また西東京には来年の目玉、清宮幸太郎内野手(1年)を擁する早実、西の横綱・大阪桐蔭と甲子園で覇を競う日大三など名門校がそろう。

 さらに今年の超目玉、創価大・田中正義投手(3年=創価)も早期クロスチェックの対象だ。田中には担当の中尾スカウトが密着する。球団関係者が評するように「クロスチェックの必要がないくらいの別格の存在」に位置づけるが、田中クラスの大物が出た場合も逃さず複数の目でマークできる利点がある。

 これまでの阪神は、ドラフト上位に挙げる候補に対しては、佐野統括スカウトが軸になって早い時期からクロスチェックを行い、他のスカウトは夏以降に視察するのが基本的なパターンだった。だが、クロスチェックの特命を帯びるスカウトの増員で、よりチームに適合した逸材獲得への道が開ける。

 ◆畑山俊二(はたやま・しゅんじ)1964年(昭39)6月11日、和歌山県生まれ。箕島から近大、住友金属を経て89年ドラフト2位で外野手で近鉄入り。同期は野茂英雄、石井浩郎ら。90年4月10日西武戦(藤井寺)で1軍初出場、91年5月14日西武戦(同)でプロ初安打。96年に近鉄を自由契約になり、97年阪神にテスト入団。同年引退。02年から阪神スカウト。

 ◆主な獲得選手 試合以外の日々の練習にも可能な限り足を運び、選手の性格、考え方などの把握にも努める。12年の甲子園で春夏連覇を果たした大阪桐蔭・藤浪晋太郎を徹底マーク。夏の甲子園大会前、球団の1位筆頭候補は花巻東・大谷だったが、粘り強く藤浪の成長ぶりをリサーチ。球団の総意として藤浪1位を確定させた。09年には母校・近大の後輩藤川俊介、11年には大阪桐蔭・西田直斗の獲得を手がけた。