今季初登板で152キロを出しても、不満だった。今秋ドラフトの超目玉、創価大・田中正義投手(3年=創価)が6日、拓大とのオープン戦に今季初先発。セ・リーグ6球団とソフトバンク、日本ハム、西武、ロッテの10球団15人のスカウトが見守る中、昨年11月以来の実戦で3回1安打3奪三振、無失点に抑えた。2回にはソフトバンクのスピードガンで、この日最速の152キロをマーク。右肩の疲労で調整が遅れた影響を感じさせず、150キロ台を連発した。だが、試合後は「上半身と下半身のタイミングが合わなくて、ピッチングにならなかった」と表情は厳しかった。

 敵は、右肩よりもブランクだった。試合前の投球練習は球が指に引っかかり、ワンバウンドの連続。「投球のイメージが湧かなかった。緊張もあった」と振り返る。先頭打者にはストレートの四球を与えた。「左足を接地した時に右腕が一緒に上がってこなかった。変化球を投げられる状態ではなかった」。すぐ直球主体に切り替え、全47球のうち変化球は9球のみ。シート打撃や紅白戦の登板もなく、最悪の状態でも直球だけで抑えた。

 不安と葛藤する日々だった。2月下旬、岸雅司監督(60)に「紅白戦で投げさせてください」と直訴した。監督は止めた。違和感を訴えた右肩は、精神的な負担もあって筋肉が硬直していたからだ。エースの心情を理解しながらも、将来を最優先に考えた。肩に負担の少ないフォームも試している。試合後、田中は「腕は振れたし、痛みもない。少しホッとした」と冷静に振り返った。156キロ右腕が満足する境地はまだ先にある。【鹿野雄太】