昨年4月から続いた延長戦の連敗を13で止めた。DeNAは10回無死満塁から、倉本寿彦内野手(25)が左中間へプロ初のサヨナラ安打を放った。6回には下園辰哉外野手(31)が左翼席に、起死回生の今季1号代打同点2ランを放ち逆転勝利につなげた。野手は故障者が続々と戻り今季初の3カード連続勝ち越し。投手防御率もリーグトップで、浮上気配が漂い始めた。

 倉本は初球を狙っていた。そこへ148キロ直球が内寄りに来たが、逆方向へ痛烈なライナーではじき返した。「前の打者が四球だしチャンス。初球からいくしかないと思っていた」と、気持ちの準備ができていた。打順を考えチャンスで回るイメージもしていた。常に中堅から逆方向の意識は持って、好調を維持している。

 細かいことにとらわれない性格なのだろう。打撃成績4位だが、数字は気にしていない。サヨナラ連敗のことも打席に入るときには忘れていた。実は打撃フォームさえこだわっていない。昨年は1本足が多かったが、今は右足を前に放り出す“振り子”に近い形だが「自分としては変わったつもりはない」と言い切る。ひとつの型には決めない。「ひとつのタイミングしか取れなくなる。投手は毎日違いますから」。坪井打撃コーチも「変えてる意識はないだろうね。微調整だな。よく変わるから、また変わるよ」と笑う。型にはまらない自然流で、プロ2年目で初のサヨナラ打を生んだ。

 勝因には代打陣の勝負強さもあった。3点を追う6回に、代打乙坂が1死三塁から適時二塁打したのが口火となった。そして代打下園が大仕事をやってのけた。「代打に誇りを持っている。監督がいつもいいところで使ってくれるのに、最近は期待に応えられていなかった。あっち(左)にはあまり打っていないので、厚かましいけど入ると思いました」と手応え十分だった。ベテランに近いが早出でティー打撃をこなし、常に体の切れを維持している。

 今季、代打陣の成績は打率3割5厘、3本塁打、15打点でリーグ3冠。ラミレス監督は坪井コーチに感謝する。「特に左打者には準備をしっかりさせてくれている」と言う。この日の立役者倉本、下園、乙坂はすべて左だ。さらには筒香、梶谷も戻った。それだけではない。投手も石田、今永、砂田と若手左腕が成長。左が“セ界”を制す日がくるかもしれない。【矢後洋一】

 ▼DeNAが延長10回、サヨナラ勝ち。延長戦は昨年4月12日中日戦からシーズンをまたいで13連敗(2分け)していた。これは94~95年近鉄の12連敗(3分けを挟む)を超え、2リーグ制後のワースト記録を更新中だった。