内野バトルの台風の目だ。阪神ドラフト1位の白鴎大・大山悠輔内野手(21)が7日、栃木・小山市内のホテルで契約金1億円プラス出来高払い5000万円、年俸1500万円(金額は推定)の最高条件で仮契約を結んだ。金本知憲監督(48)も認めるユーティリティー選手は本職の三塁だけではなくどこでも守る覚悟。1年目から内野のレギュラーを狙う。

 柔和な笑顔を浮かべていた大山の表情が険しくなった。「プロに入る以上は結果を残していかないといけない。自分も割って入りたい。与えられたポジションでしっかりプレーしたい」。頭に描いたのは、1年目から甲子園の黒土にまみれる姿だ。

 門戸は開かれている。金本監督は大山について「外野もできるし、サード、セカンド、ショート、ファーストとどこでもできる」と万能ぶりを評価。すでに来春の1軍キャンプスタートを確約し、二遊間から競わせる方針を固めている。全内野ポジションのレギュラー候補になり得る。

 もちろん、キャンプ、オープン戦といくつものハードルが待っているが「かっこつけるプレーじゃなく1つ1つ泥臭く、1球1球食らいついていくプレーを見てほしい」という大山が、レギュラーをつかむ可能性もゼロではない。

 即戦力の期待に応えるためにも、アニキ流の筋力トレーニングを導入する。これまでは高校時代も含め、練習でウエートトレを行うことがほぼなかった。だが、「これから野球を仕事としてやっていくのでケガをしないことが大事」と積極的に筋力アップに励むことを決意。球団からのアドバイスも受け、年明けの入寮直前まで白鴎大の寮に残り、体を大きく、強くするつもりだ。

 茨城育ち、大学も栃木で過ごした大山にとって、関西の生活は想像できないようだが、虎の熱いファンについてはイメージが湧く。「ファンの方が、温かく応援してくれる。ファンの方に応援してもらえるような選手になりたい」。大山の活躍が超変革2年目の金本タイガースを活性化させることは間違いない。甲子園に足を踏み入れたことのない男が、ルーキーイヤーから聖地で暴れ回る。【桝井聡】

 ◆大山悠輔(おおやま・ゆうすけ)1994年(平6)12月19日、茨城県生まれ。7歳で野球を始め千代川中では軟式野球部。つくば秀英では投手兼内野手。最速143キロで高校通算27本塁打。白鴎大では1年春から出場。今夏の大学日本代表の4番を務めた。181センチ、85キロ。右投げ右打ち。

 ◆阪神の内野手事情 現時点でポジションを確約されている選手はゼロ。鳥谷から遊撃の定位置を奪った形の北條も地位を確立したとは言えない。一塁手もゴメスの去就に、捕手と両にらみの原口など複雑な要素が絡み合う。二塁は7月に左アキレスけん断裂で離脱した西岡が復帰に向けてリハビリ中。上本、大和、荒木のほか、本職が外野手の板山らも候補になる。三塁も外国人補強によって大きく情勢が変わる。新人の白鴎大・大山、JX-ENEOS・糸原にもチャンスはある。