「白髪の野球少年」がセ・リーグ史上最年長記録を更新した。ヤクルト石川雅規投手(37)がDeNAを相手に6回5安打2失点で勝利した。日本の4番が手を出せなかった。6回2死走者なし、打者は筒香。カウント2-2からの5球目。思いを1球に込めた。小雨を切り裂いた128キロのカットボールは外角低めいっぱいに決まる。見逃し三振を奪うと思わず拳を握った。「息子たちが来ていたんで。そこで格好いい姿を見せられて良かった」と笑った。

 久しぶりの開幕勝利の味は別格だった。セ・リーグ史上最年長での開幕投手を伝えられたのは3月11日。オープン戦に登板後、真中監督から「石川、頼むぞ」と任された。オフにはヨガを取り入れるなど、肉体改造。「開幕投手を目指せば、開幕ローテに入れる」と5年ぶり8回目の大役を狙っていた。この日も雨で早打ちしてくる相手打線にゴロを打たせて、テンポアップ。「こういう試合で何度も投げている」と経験が生きた。

 年齢を受け入れる。気づけば選手では最年長。数年前から頭には白いものが増えてきた。しかし「40代で一線級の選手もいれば、高卒ですぐに活躍する選手もいる」と気にしない。海外の格言「年齢なんて数字でしかない」を心に刻んでいるからだ。だから白髪染めをしない。「染める時間があるなら、野球のことを考えたり、野球のために使いたい」と外見を気にせず、野球少年のようにただボールに向かい合うと決めた。

 父としての思いもある。この日スタンドには長男大燿(だいや)君(12)と栄寿(えいす)君(9)が観戦に訪れていた。「栄寿が中学に入るまでは野球をやってその姿を見せたい」と話す。いつまでも格好いいオヤジでいるために、負けるわけにはいかなかった。

 これで通算153勝。「まだまだ若い選手に負ける気はない」と意気込む。200勝まで、白髪の数とともに白星も増やしていく。【島根純】