阪神高山は、やはり「神宮の申し子」だった。2点差に迫った8回1死走者なし。明大時代から親しむ球場で芸術的なバット操作を披露する。カウント1-1から石山の3球目、内角低めのスライダーを腕をたたんでさばくと、高々と舞う弾道を描いて右翼席に吸い込まれた。

 17年1号だった2日の先頭打者アーチ以来となる今季2号ソロ。「真っすぐを打ちにいって、変化球に対応できて、結果的にホームランになった」。競り負けたが、終盤の一撃で、強烈な存在感を見せつけた。

 昨季の新人王は、今年は飛距離アップの20本塁打を目標に掲げ、開幕から試行錯誤する。打率は2割5、6分台を推移し、先発が左腕なら左翼を中谷に譲る屈辱も味わった。この日は6回にもライナーで右前へ。マルチ安打で、3試合連続安打に伸ばした。東京6大学の歴代最多131安打を放ち、プロ初アーチも懸けたフィールドは、パワースポットそのものだ。

 バスへ引き揚げる際、厳しい表情で言う。「まだ1試合なので、そんなに簡単なことじゃないですけど、また明日、切り替えて頑張ります」。目指すべき理想がある。心のスキは見せない。【酒井俊作】