石巻専大(宮城・南東北)が岐阜経大(東海地区)に、あわやノーヒットノーランの内野安打1本に抑えられ、0-1の完敗を喫した。8回6安打1失点と粘った菅野一樹投手(2年=聖和学園)を援護できなかった。

 手も足も出なかった。相手下手投げの岐阜経大・与座海人(4年=沖縄尚学)の120キロ台の遅球にタイミングが合わない。リーグ首位打者の1番小野侑宏主将(内野手、4年=聖和学園)が無安打で、ペースをつかめなかった。「力の差を感じた。動く球を打ち損じてしまった。南東北にはいないタイプ」と肩を落としたが「良い面と悪い面が出たけど、全国は楽しめた」と神妙な面持ちで振り返った。

 岐路に差しかかっていたチームが全国1勝をつかんだ。昨冬、就職活動を優先したい新4年生が次々と退部し、入学時には20人以上いた同期が、春を前に11人まで減った。主将の小野は「後輩たちにこの部にいる意味を分からせてあげたい」と、プレーや背中、言動でけん引。その小野の姿に触発された4年生が結束してチームは好転した。この日、8回1失点と粘った菅野は「4年生が引っ張ってくれたからこそ、ここまでこれた。次は自分たちの番」と力強く宣言した。

 4年生11人は、この試合をもって引退する。試合後、記念写真に納まった小野は胸を張った。「後輩たちにここで野球をやる意味を残せたと思う。途中でやめても何も残らない。たった11人でも最後まであきらめずにやれば、いい結果が出せることを証明できた」。酒井健志監督(39)も前を向いた。「この4年生の姿を見て、どう感じたのか。これを超えてやろうという気持ちがあれば強くなる」。小野たちが植え付けた遺伝子が、また次の世代で花を咲かせる。【高橋洋平】