暑さに負けず、投げきった。楽天美馬学投手(30)が、6回2安打無失点で勝利に貢献した。試合開始の午後4時時点で30度近くの気温のなか、速球と変化球を低めに集め、西武打線を翻弄(ほんろう)。7回の投球練習中に右足をつり、急きょ降板したが、2番手の福山博之投手(28)が3者凡退を披露。同点とされた8回に、無死満塁から代打アマダー内野手(30)の2点適時二塁打で勝ち越し、楽天が接戦をものにした。

 極度の緊張感が、美馬の体に異変を起こした。6回に右足をつり、7回も投げられると自分に言い聞かせマウンドに上がったが、投球練習でかばいきれなくなった。「つっただけなんですけど、やっぱり無理だった」。悔しさを押し殺し、歩いてベンチに下がった。無念の降板となったが、6回2安打無失点、72球と抜群の安定感を誇示した右腕の投球に、梨田監督は「ゴロも多く、球数も少なかった。引き締まった投球をしてくれた」と賛辞を贈った。

 試合開始時の仙台市は30度近く。暑さに加え「今日は相当緊張しました」と、重圧を抱えマウンドに立った。1日のソフトバンク戦。6回途中10失点と、大事な首位攻防戦でふがいない投球をした自分を責めた。「前回はボールが甘かったので、低く、低くと思って投げました」。絶対にチームを勝たせるという責任感。制球を意識した投球が、美馬を心身共に消耗させた。打者19人中15人に対して初球はストライクから入り、ゴロ8、フライ3、三振5。最後は右足がつり力尽きたが、十分すぎるパフォーマンスだった。

 試合前の準備が、安定感を支えている。昨年までは試合直前に遠投をしたが、今年は50メートル程度の距離にとどめている。「遠投をすると、その後ブルペンで上体を戻す作業をしなくちゃいけない。修整しなくてよくなったから、スムーズに試合に入ることができる」。経験から導き出され調整法が、リーグ3位の防御率2・46の下地となっている。

 美馬の降板後は福山がきっちり3者凡退。8回に同点に追いつかれたが、その裏、無死満塁から代打アマダーの2点適時二塁打で競り勝った。チームの粘りに、梨田監督は「(同点になっても)雰囲気は悪くなかった。しっかり前を向いて戦います」と気を引き締める。首位ソフトバンクとは1・5ゲーム差。もう、勝ち続けるしかない。【田口元義】