ソフトバンク柳田悠岐外野手(28)が豪快アーチでチームの首位と自身の打撃3冠を奪回した。2点リードの8回、オリックス小林から右翼席に運ぶ25号ダメ押し2ラン。打率は3割3分1厘をキープし、打点も初回の犠飛を合わせて3打点を加え、80打点に到達した。内川の離脱で「4番」に座る男の奮闘で、7月8日以来の首位に浮上。鷹が再び上昇気流をつかんだ。

 打球はオリ党を見下ろすように舞い上がり、右翼3階席に飛び込んだ。柳田の代名詞であるドライブのかかった強烈ライナーではなく、着弾点をきっちり計ったような貫禄の1発だった。25号ダメ押し2ラン。豪快に振り切ると、フィニッシュの形のまま柳田は打球を目で追った。

 「打ったのはストレート。少しバットの先でしたけど、しっかり自分のスイングができたと思う。ホームランになってよかった」。悠々とダイヤモンドを周回した。

 1発で「打撃3冠」に返り咲いた。打率3割3分1厘をキープし、この日4打数無安打に終わった西武秋山の3割2分9厘をかわした。本塁打も積み上げれば、打点も初回の先制犠飛を含め3打点を挙げ、80打点に乗せた。とはいえ、道中の数字に柳田は無頓着だ。

 「とにかく今日は勝てた。それが一番なんで。1戦1戦やるだけです。また明日頑張ります」。

 内川が左手骨折で離脱。正念場の夏は柳田が「4番」に座り続けることになる。それだけに、精神的にも肉体的にも弛緩(しかん)してはいられない。この日も2打席目に自打球が右ふくらはぎ上部に当たった。苦悶(くもん)の表情で打席を外したものの、ベンチに下がることはなかった。何度も当たった自打球の影響で、右膝を痛めている。アイシングは欠かせない。本来の走塁も100%ではないものの、寡黙に「4番」の重責を務めている。

 「やっぱりこいつなんでしょうね。4番は」。試合前の練習中。鳥越守備走塁コーチが柳田の動きを見つめながらポツリとつぶやいた。この日、楽天が西武に敗戦。V奪回のキーパーソンが、7月8日以来、25日ぶりの首位奪回も導いた。厳しい「夏の陣」を乗り越え、柳田はさらに頼りになる男に成長するはずだ。【佐竹英治】