阪神鳥谷がしぶとくチームの苦境を救い、先制点に結びつけた。5回無死、四球の走者を一塁に置いていた。打線は右腕ブキャナンの前にノーヒットの状態。「(無安打を)気にしていないわけではなかったけど…。とにかく、つないでいこうと思っていた」。ベテランらしい冷静な心と巧みな技で、停滞ムードに風穴をあけた。

 1ボール2ストライクと追い込まれ、内角低めにカーブが沈む。体勢を崩されながらも、食らいついてバットですくった。フラフラと上がった飛球は猛チャージする中堅山崎の手前にポトリ。後逸する間に一塁走者中谷は一気に三塁へ。カバーした左翼バレンティンの三塁送球がそれると、そのままホームに生還。チーム初安打に込めた執念で悪送球を誘い、流れを変えた。

 これで通算2000安打まで残り36本。大記録達成へ、徐々に周囲の空気が変わり始めているが、本人の「本当に気にしていない。2000本打つためにプロに入ったわけじゃないんだから」という言葉は偽らざる本心だ。野球はチームスポーツ。勝ちたい、優勝したい、日々その一心だけなのだ。

 「子供とジャンケンとかオセロをする時でさえ、負けたくない性格なんだから」。クールな仮面をはぎ取れば、生来の負けず嫌いが顔を出す。この日、首位広島とのゲーム差は9に縮まった。虎は、背番号1は簡単には諦めない。【佐井陽介】