トリの2000安打へのカウントダウンは、飛ぶ鳥を落とす勢いだ。阪神鳥谷敬内野手(36)が、中押しタイムリーを含む猛打賞で8得点&3連勝に貢献。大台まで残り17本に迫った。ここ10試合で18安打を量産し、月間打率3割9分7厘は両リーグトップ。プロ14年の月別通算でも、最高打率の3割1厘を誇る8月大好きな夏男が、猛虎の逆襲を引っ張る。

 重圧なんて、どこ吹く風だ。鳥谷はこの日も駆け足で「2000本ロード」を突っ走った。1点リードの4回1死一塁。右腕若松の浮いたスライダーを右中間最深部まで打ち上げた。「青柳がいいピッチングをしてくれていた中だったし、追加点が取れて良かった」。適時二塁打で貴重な追加点をたたき出すと、二塁ベース上でニヤリ。「いいところに飛んでくれましたね」と試合後もニヤリだ。

 勢いが止まらない。5回には左中間二塁打。8回にも右腕小熊から右前打を放ち、7番大山の適時打をお膳立てした。今季4度目の猛打賞を決め、12安打8得点の3連勝をけん引。ここ10試合の成績は計37打数18安打の打率4割8分6厘と絶好調だ。通算2000安打まで、いよいよ残り17本。周囲の騒がしさが増しても、「別に2000本を目指してプロに入ったわけじゃないし」と自然体を貫けるのが頼もしい。

 春先もプレッシャー!? に打ち勝っていた。5月7日の広島戦(甲子園)で1試合5打点を記録。4回に先制2点打を放った瞬間、鳥谷は「ヨッシャー!」と雄たけびを上げながら走りだした。普段はめったに表情を変えない「鉄仮面」で知られる男が、珍しく感情をあらわにしたシーン。実は特別な事情があったという。

 「あの日は嫁さんに子供全員、子供の友達まで甲子園に来ていてね。家族が試合を見に来ることなんて、年に1回あるかないか。そんな日に打たなかったらマズいからね(笑い)」

 今も昔も、重圧を当たり前のように力に変えられる。

 これで8月は58打数23安打。月間打率3割9分7厘は両リーグトップだ。プロ14年間の通算でも8月は月別最高の3割1厘を誇る。日差しが強くなればなるほど、パワーアップする「夏男」。お手製の「鳥谷メーター」を持参している虎党は、1打席ごとに数字を替える作業が忙しくなりそうだ。【佐井陽介】

 ▼鳥谷が今季4度目の猛打賞で通算安打数を1983とし、2000安打へあと17とした。今月8月の月間打率3割9分7厘は、12球団の規定打席到達者の最高。鳥谷はプロ通算でも8月の打率が3割1厘で、これは月別最高だ(3、4月と、9、10月はそれぞれ合算)。

 ▼今季は、ここまで108試合で111安打しており、1試合平均1.03安打。このペースでヒットを続ければ、2000安打到達は17試合後の9月8日DeNA戦(甲子園)。ただし8月は1試合あたり1.35安打しており、今月の勢いを維持すれば9月3日中日戦(甲子園)が達成日となる。