頼もしい男が帰ってきた。左手親指付け根を剥離骨折し離脱していたソフトバンク内川聖一外野手(35)が、9月30日のオリックス戦(京セラドーム大阪)で7月23日ロッテ戦以来、約2カ月ぶりに1軍に復帰。3回の第2打席で左中間へ復帰初安打となる適時打を放った。残り3試合で、クライマックスシリーズ(CS)、日本シリーズに向けて状態を上げていく。チームは5点差をひっくり返され逆転負けした。

 内川らしい打球だった。3回の第2打席、オリックス山岡のスライダーをうまく拾うと左中間へ運んだ。復帰初安打は中堅左への適時打。「前の打席、チャンスで凡退してしまったので、この打席は絶対に打ってやろうと思っていた」。初回の第1打席で三ゴロ併殺に倒れた球と同じスライダーを次の打席で攻略した。

 7月23日ロッテ戦の一塁守備で打球を当て、左手親指付け根を剥離骨折。約2カ月ぶりの出場は工藤政権3年目で初めての「5番」だった。予定通り3打席で交代。3打数1安打で、通算2000安打へ残り29安打としたが「ホッとはしていない。(今後は)話し合いながらやりたい」。工藤監督は「最初から(4番)というよりはね。価値のある安打だったと思います」と復帰を歓迎した。

 チームがリーグ優勝に猛進していた9月中旬。福岡・筑後市のファーム施設でリハビリの毎日を過ごしていた頃のことだ。「主将(内川)も選手会長(長谷川勇)もいなくても勝てる。まだまだ指は痛いですよ。CS、日本シリーズに間に合ったからって、いきなりチームに合流しても、打てるというものではない」。大事な短期決戦に故障明けで戻っていいものか、苦しい胸の内を明かしていた。

 迷いを吹き飛ばし、戦力として戻るために肉体を作り直した。この2カ月で、体は大きくなり若返った印象すら受ける。夏場に体重は1キロ増加。「体脂肪は15、16%あったのが、12、13%に減ったんですよ。今までいかに健康管理してなかったかですよね」。焼き肉好きで、毎日のように遠征各地で食べ歩いていたが、リハビリ中の自宅中心の食生活がボディーもリフレッシュさせた。

 この日は一塁の守りでも2回に小谷野のライナーを好捕するなど無難に動いた。チームは5点差を守りきれず逆転負け。先制した試合での連勝が27でストップした。それでも暗くなることはない。右脇腹を痛めた柳田のCS出場が微妙な中、頼もしい主将が帰ってきた。【石橋隆雄】