一振りで劣勢を払った。日本ハム清水優心捕手(21)が、プロ初の逆転満塁弾を放った。1点を追う7回1死。埋まった塁上を見渡し「絶対、打ったろ!」とあふれるアドレナリンを闘争心に変え、打席に入った。楽天辛島の直球を振り切ると、打球はバックスクリーン左まで届いた。清宮の安打を起点に作った好機を生かし「アイツが打ってくれて、火が付いた。つないでくれたのは大きかった」。プロ初のグランドスラムに右拳を突き上げ、ほえ続けた。

 早くも今季5号。パンチ力あふれる打撃で、正捕手の大野が中日へFA移籍した穴を埋めている。「打席内でのタメが作れた」と、中田から仰いだ指示を実践。4番からも「できてたやん」と褒められた。九州国際大付で高校通算35本塁打の打撃が、プロ4年目で開花しつつある。

 実際は打撃でなく、守備面を認められドラフト2位の高評価で入団した。「打撃は苦労すると思っていた。その代わり、守備はそれほど時間はかからないだろう」と買っていた担当の原田スカウトは、1年目のオフに髪を赤茶色に染めた清水を見つけ「常に謙虚であれ」と厳しくしかった。

 この一言で目が覚めた。「第一線でやってこられた谷繁さんは、髪も黒く、高卒1年目から1軍で活躍されていた」。備えていた防御の資質に長打力と謙虚さを加えて。日本ハムの本塁を守る。【田中彩友美】