巨人がエース菅野の好投も痛恨の敗戦で3位に転落した。5連勝中だった右腕は5回1死まで完全投球。打たれる予感はなかった。だが、糸井へのカットボールが真ん中に入った。唯一の落とし穴だった。打球は浜風を切り裂き、右翼席へ飛び込んだ。剛球と鋭利な変化球で、広大な甲子園ではデビュー以来1発を許したことがなかった。のべ350人目の打者となった糸井で陥落した。

 この1点がすべてとなった。6回無死三塁の危機もギアを上げ、中軸を退けて無失点で切り抜けた。それでも援護は最後までなかった。プロに入り、甲子園に愛された男が4年ぶりに聖地で黒星を喫した。敗北とは言いがたい心境が言葉に表れた。

 菅野 いいピッチングだったのでと片付ければそれまで。1発を打たれて1-0で負けるのは、表現は難しいけど、全部自分のせいにしたら苦しくなりそう。前回より状態は全然よかった。0点に抑えられれば良かったけど、考えさせられるゲームだった。

 勝ちを計算している試合を落としたのが現実だった。高橋監督は「しょうがないで片付けるのはどうか」と菅野の言葉に重ねつつ「よく投げた」と認めた。失意は払拭(ふっしょく)するしかない。【広重竜太郎】