白球が右翼席に吸い込まれると、真っ赤なマツダスタジアムが揺れた。一塁を回った広島西川龍馬内野手(23)は力強く右拳を握り、二塁手前で再び拳に力を入れた。0-0の7回。楽天美馬の初球、浮いた高めカットボールに反応した。「初球から行こうと思っていた。前の打席、同じ球でやられていたので思い切って振ってみようと」。今季1号が値千金の決勝3ランとなった。

 誰もが認める打撃センスを持ちながら、開幕直後は不振に陥った。野球人生でも「記憶にない」ほどのスランプ。5月2日の2軍降格が転機となった。気持ちをリフレッシュし、タイミングの取り方も変えた。軸足重心でバットを振り出す形から、右足から左足へと重心を移動させながら振り出すように修正。同25日に1軍に再昇格した。

 再昇格後は打率3割7分1厘を残す。シーズン打率も降格時の1割1分8厘から2割8分8厘まで上げた。緒方監督も「上がってきてからはすごい数字を残している」と目を細め「あとは痛いかゆいと言わずにやってもらうだけ」と注文をつけた。

 7日の日本ハム戦の6回にレアードの打球を左膝に受け、2試合続けて先発から外れた。試合後は「それもありました。今日こうやってスタメンで使ってもらったので、結果を残さないといけない」と表情を引き締めた。高い技術に悔しさを乗せたバットがチームを3連勝に導いた。【前原淳】