阪神陽川が土壇場で踏みとどまった。4試合連続無安打でスタメン落ちの窮地だった。この日は7番に降格。3回に左前へ運び、16日巨人戦以来、21打席ぶりの安打を放つと、本領発揮は7回だ。1死一塁で三嶋の低めスライダーを豪快にすくい、バックスクリーンに今季4号2ランを放った。

 快勝後、金本監督は自ら切り出した。「陽川も今日、迷ったけど、いかせてよかったなと思う。(先発落ちの)そういう意見もあったけどね。みんなでもうちょっと我慢しようかと」。実質上のラストチャンスで鮮やかな底力を見せつけた。

 試合前練習中、金本監督は自らの経験を「打てないときはアメリカンノックとか」と話した。連日、自らノックバットを振り、陽川にゴロを散らした。指揮官の右手親指付け根は出血し、バットに付くほどだ。陽川は言う。「試合中、考えても仕方ない。練習でやってきたことを打席で出すだけ。打席に入る前に思い出して」。主砲候補が流した汗はウソをつかなかった。