時代は効率化にある。広島丸佳浩外野手(29)が、マジック1で迎えた26日のヤクルト戦で5打数3安打と勝利に貢献。チームをリーグ3連覇に導いた。打撃への探求心が深く、少しずつ、少しずつ無駄を削る作業を繰り返し、打率3割2分4厘、38本塁打、95打点の好成績をマーク。出塁率4割8分2厘は、86年ロッテ落合博満の4割8分7厘の日本記録に迫る数字だ。

無駄を省くのは打撃だけではない。1軍に定着した時期に酒やたばこを一切やめ、試合前にバットのグリップに残る松ヤニを1枚刃で丁寧に削る作業は日課だ。

効率を求める意識は行動にも現れる。8月23日ヤクルト戦は台風接近の影響で右翼から左翼へ強い風が吹いていた。1回表、ポリ袋がふわりふわりと中堅近くへ舞い、試合が中断。拾おうと小走りした丸はなぜか、わざわざグラブを外して左手でつかみ、そのままポケットに入れた。丸の右尻ポケットにはロジンが入っているため、拾っても入れられない。拾って入れるところは左尻ポケットしかない…。それならば左手で拾うしかない。「すごいでしょ。僕はビニールのところまで行く間にピッピッとそこまで計算していたんですよ」。瞬時の判断に、珍しく得意気だった。

「打撃にゴールはない。毎日、毎日、0・何ミリとか、細かい作業を積み重ねていかないといけない」

少しずつ、少しずつ効率を求めてきた男が、2年連続MVP最有力候補に挙げられる打撃を作り上げた。【前原淳】