阪神が来季の1軍打撃コーチとして、通算2050安打を誇る元中日の和田一浩氏(46=野球評論家)を筆頭候補に、右打ちの指導者の招へいを検討することが1日、分かった。今季は慢性的な貧打に陥り、この日も1安打完封負け。打撃部門のてこ入れは急務で、卓越した技術を持つ和田氏を軸に選定作業に入る。

阪神がDeNA相手に今季の窮状を象徴する1安打完封負けを喫した。貧打はシーズンを通した弱点で、低迷の大きな要因になっていた。手詰まり感がある苦境を打破するため、球団側は来季の1軍打撃コーチとして、右打ちの指導者を模索。西武、中日で一時代を築いた和田一浩氏を筆頭に、複数候補のなかから招へいする方針を固めたことが判明した。

和田氏は実績、経験ともに申し分がない。現役19年間で通算2050安打、319本塁打を記録。生涯打率3割3厘を誇り、球史に名を刻んだスラッガーだ。西武、中日でともに優勝に導く主力として活躍した。初めて規定打席に達したのが30歳。15年には史上最年長の42歳11カ月で2000安打に達した。「遅咲き」の試行錯誤は、何にも代えがたい財産だ。金本監督とは東北福祉大で先輩後輩の間柄。15年に引退後の指導者経験はないが、猛練習のたたき上げでスターダムを駆け上がった歩みは貴重なヒントになりそうだ。

若手強化に一役買う存在だろう。阪神は昨季20本塁打を放った中谷や16年新人王の高山が低迷し、開幕スタメンを張った2年目の大山もレギュラーから脱落。成長を見込んだ若手は速球に力負けするなど打撃不振に陥った。新外国人ロサリオも日本の配球に対応できなかった。チームの554得点、84本塁打はリーグ最少だ。右打者特有の感覚もあるため、新たな右打ちの指導者の重要性が指摘されていた。今後は、和田氏を軸に候補を絞り込んでいくとみられる。

シーズン終盤に入り、明るい話題もある。9月9本塁打の大山のほか、故障離脱中だが遊撃レギュラーを手中に収めつつあった北條や正捕手間近の梅野ら成長株も現れた。陽川も今季、自己最多の6本塁打。期待感あふれる右打者は多い。若手強化&勝利を追い求めて、打撃コーチの選定作業を始める。来季、14年ぶりに優勝を果たすためにも、本格的な検討に入る。

◆和田一浩(わだ・かずひろ)1972年(昭47)6月19日生まれ。岐阜県出身。県岐阜商2年の春夏に甲子園出場。東北福祉大では最優秀選手2度。神戸製鋼を経て96年ドラフト4位で西武入団。02年捕手から外野手にコンバート。05年首位打者、最多安打。07年オフFAで中日移籍。10年セ・リーグ最年長MVP、最高出塁率。15年2000安打を達成し、引退した。ベストナイン6度。通算2050安打、319本塁打、1081打点、打率3割3厘。右投げ右打ち。