エースの仕事だ。CSファイナルS初戦の先発を任された広島大瀬良大地投手(27)が、6回1失点の好投で快勝の原動力となった。1回無死一塁を併殺打で切り抜けるとリズムに乗り、力で巨人打線を押し込んだ。今季15勝を挙げ飛躍した本格派が、チームに最高の勢いを運んだ。

4年ぶりCS先発。しかも初戦。大瀬良は自分の気持ちを抑えきれなかった。プレーボール直後、先頭坂本勇に150キロ超の真っすぐを4球続けた。結果は中前打も手応えを得た。「高ぶっていたのはあるかもしれない。大胆にいくところは大胆に。スピードガンと打者の反応からも(好調が)分かった」。無死一塁としても、田中俊を追い込むと最後は内角直球で詰まらせ二ゴロ併殺。巨人の勢いを止め、勢いに乗った。

中9日で万全を期したマウンドでは、思った以上に球が走った。大胆な投球とは裏腹に、頭の中は冷静だった。シーズン中とは異なり、同じ打者に同じ球種を続け、これまでにない配球で巨人打線を惑わせた。話し合いを重ねた会沢との息はぴったり。6回まで4度、先頭打者を出すも「点を与えなければ大丈夫」と切り替えた。6回は1点を失い、なおも2死満塁としながら最後は宝刀カットボールで長野を二飛に切った。

初の“開幕投手”。重圧はあった。プロ1年目から精神的な影響で発症するようになったじんましんが、CS直前にひどくなった。12日には薬を処方してもらうため病院に立ち寄った。それでも「緊張はない。これまで経験させてもらっているのもある」と自信を持ってマウンドに上がった。2月のオープン戦で確かな成長への確信を得た相手と同じ、坂本勇との対戦で勢いづいた。

6回1失点。ポストシーズン初勝利で大役を果たした。緒方監督は「大地の投球に尽きるでしょう。昨年とは姿がまったく違う。頼もしく感じる」とたたえた。今日勝てば王手も、もつれれば中4日で22日に先発する可能性が高い。「行けと言われれば行くつもりで準備したい」。白星発進に導いても、次なる戦いに向けて引き締め直した。喜ぶのはまだ早い。【前原淳】