失敗が許されない局面でも、広島クリス・ジョンソン投手(34)のリズムは変わらない。4回無死一、三塁。18・44メートル先の石原が動かす指先にうなずきもせず、すぐさまセットポジションに入った。

「イシのミットめがけてただ投げるだけ。甘くならないように細心の注意をしたよ」。来日後の4年間、ほとんどの時間をともにしてきた恋女房のリードを信じて、7回1失点の快投でシリーズ1勝を導いた。緒方監督も「息がぴったりだったね」と、あらためて名コンビぶりに驚いた。

ポストシーズンは6試合に先発して防御率0・86。その理由に「短期決戦でも変えないようにしている。ただ球場の雰囲気が違うから集中力が増すのかもしれない」と笑った。集中力を高めた理由はほかにもある。相手のバンデンハークはパイレーツ時代のチームメート。「素晴らしい能力の投手と知っている。厳しい投手戦になる覚悟だったから、なおさら自分の投球に専念しようと思ったんだ」と明かした。

さらに、晴れの舞台に合わせて米国から父リチャードさんが来日していた。リチャードさんの祖母は日本人。「僕の中に日本人の血が入っている。日本でプレーしたかった」と15年に来日して4年目だ。5月に生まれたばかりの愛娘の顔を見せて父を喜ばせ、マウンドでも最高の親孝行をしてみせた。

「サイコーデース!」。お立ち台でそう叫ぶ助っ人の姿に、ファンの期待も高まった。まだ果たせていない大きな夢に1歩近づいた。【柏原誠】