東都大学野球リーグ各校の4年生の進路が29日、ほぼ出そろった。最速150キロ右腕の中大・伊藤優輔投手(4年=小山台)は三菱日立パワーシステムズに入社する。大学4年間で3度の入れ替え戦を経験。培った「土壇場力」で飛躍を期す。

伊藤は「あれがある以上、生まれ変わっても東都では投げたくないですね。あれに比べると、他のきついことも大したことないです」と笑った。「あれ」とは東都大学リーグの1部、2部の入れ替え戦のことだ。

優勝から14年間遠ざかっているが、名門中大は21シーズン、1部の座を守ってきた。「東都でやっていく上で、1部として神宮で試合ができるかどうかはとても大事」と伊藤は強調する。入れ替え戦の緊迫感を2年春、4年春・秋と4年間で3度も経験したが、全て踏みとどまった。

大学最後の登板も専大との入れ替え戦だった。入れ替え戦で通算6試合、34イニングをしのいできた。3年春の試合中にひざを骨折し、最後の1年は患部にワイヤが入ったまま投げ続けた。「中大野球部の歴史や伝統を考えると、怖さもあった。勝ってホッとしました」。野球部を取り巻く人たちの期待と不安を背に、孤独のマウンドで戦ってきた。どうやって重圧に勝ったのか。「失敗してどうなるかを想像するより、乗り越えた時に自分が成長した姿をポジティブに考えたら、結果がついてきました」。無事にたすきをつなげたことに胸をなでおろした。

大学4年間での最大の学びを糧にし、社会人・三菱日立パワーシステムズへ進む。「土壇場で発揮できた力を、社会人でも、いつかプロでも出せればなと思います」。真の強さを備える右腕は、次のステージでさらなる飛躍を期す。【金子真仁】

◆伊藤優輔(いとう・ゆうすけ)1997年(平9)1月14日、東京都生まれ。尾久八幡中では都大会出場。小山台では3年春に甲子園出場。初戦で履正社に敗退したが、「都立の星」として注目された。最速150キロの直球に加え、5種の変化球を操る。178センチ、77キロ。右投げ右打ち。