38球に、進化形のカーブを織り交ぜた。日本ハムのドラフト1位、吉田輝星投手(18=金足農)が2日、2軍キャンプ地の沖縄・国頭でブルペン入り。報道陣や観客など約300人が訪れた南国で、捕手を座らせて本格投球を披露した。自己採点は50点も、10球投げた縦に割れるカーブには、首脳陣も合格点。実戦デビューとなる16日の紅白戦(国頭)へ向け、調整計画も決まった。

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絶え間ないカメラのシャッター音は、一切、耳に届かなかった。独特の雰囲気が漂った日本ハム吉田輝のキャンプ初ブルペン。荒木2軍監督ら首脳陣が見守る中での投球練習は「力みがあった」という。立ち投げでは上体が前へ突っ込みマウンドの傾斜から滑り落ちる場面もあったが、捕手を座らせて球数を投げるうちに、球に威力が戻ってきた。最後の1球、渾身(こんしん)の直球が低めに決まると、ギャラリーから「今のはいい球」と、拍手がわき起こった。

直球にカーブ、スライダーを交えて38球。「お客さんが見ていることで、調子が良ければ『どんどん見てくれ』となるけど、そういう気持ちになれていない」。昨夏の甲子園大会準優勝右腕にとって、それは、調子が悪い時のバロメーター。「あまり思い通りの球がいってなかった」と自己採点は50点とした。

それでも、タダでは終わらない。「今日はバランスが悪かった」と不調を認めた加藤2軍投手コーチだったが、10球投げたカーブには「あまり見ない曲がり。あれは武器になる」と目を留めた。吉田輝の変化球といえばスライダーだが、最近、自信を深めているのが、このカーブだ。1月の新人合同自主トレ期間中に測定した投球動作の解析データで、あることに気がついた。米大リーグのカーショー(ドジャース)が操るカーブと、回転軸の角度や曲がり方で「近いデータが出ている」という。目指しているのは「少しも斜めにならない『真縦』のカーブ」。“史上最高のカーブ”と称されるサイ・ヤング賞左腕と同等の武器を、習得しようと必死だ。

この日は、注目ルーキーを一目見ようと、報道陣、観客合わせて342人が国頭を訪れた。今後は3度のブルペン入りと打撃投手を経て、16日の1、2軍合同の紅白戦を迎える予定で「キャンプ中に最終的には100%に持っていきたい」と高みを狙う。【中島宙恵】

◆吉田輝の今後の予定 第2クールの5、7日と第3クールの10日にブルペン入り。11日はブルペンで調整した後にフリー打撃で打撃投手を務める予定で、16日の紅白戦に臨む。

○…夏の甲子園準優勝右腕という共通点がある荒木2軍監督は、吉田輝の初ブルペンに「みなさん(報道陣)のおかげで、ばたついている印象があった」と苦笑いだ。早実時代に“大ちゃんフィーバー”を巻き起こした甲子園のスターは、注目されることの難しさを知っている。「慣れないといけない。僕の時はこんなもんじゃなかったので、何とかなります」と助言した。

○…開幕カードで戦うオリックスの依田スコアラーが、さっそくルーキーのブルペンチェックに訪れた。吉田輝の投球練習には「力んでいたけど、球持ちがいい。間違いなく素材はいい。打者との対戦では、思ったより球が来て差されそう」と印象を口にし「あれだけ甲子園を沸かせた子なので、敵としても対戦が楽しみ」と期待した。