阪神が炎の6連打で鮮やかな逆転勝ちを決めた。口火を切ったのはルーキー木浪聖也内野手(25)だ。5回2死走者なしで代打として登場。自身23打席ぶりとなる安打を右前へ運ぶと、後続も続き、今季ワーストだった連続無得点イニングが24で止まっただけでなく、5得点で一気に中日山井をKOした。木浪は6回に3号ソロもマーク。大反撃の起爆剤となってみせる。

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木浪が突き上げた拳に、猛虎打線が呼応した。5回2死走者なし。代打で右前打を放ち、自身23打席ぶりにHランプをともした。一塁ベース上でガッツポーズ。「ずっとヒットが出てなかった。なんとか結果を残したいと思った打席でヒットが打ててよかった」。思いを込めた一打が勝利への第1歩となった。

次打者近本が反撃の適時二塁打を放てば、2番北條も連続適時二塁打。福留の内野安打を挟み、4番マルテ、5番大山まで怒濤(どとう)の6連打。25イニングぶりの得点を刻んだかと思えば、山井に勝利投手の権利を献上する直前から、一気の5得点でKOだ。

復活を告げる一打だった。「ここまで打てなくなるのか…って正直に悩んだ」とこぼしたこともある。オープン戦は12球団最多の22安打で、開幕スタメンをつかんだ。だが、シーズンでプロ初安打を放つまで18打席かかった。「プロって、こんなにすごいんだ…って本気で思った。(プロ初安打は苦しんだ分)今までの野球人生で一番うれしかった」。挫折は夏場に入ってもあった。7月26日、初の2軍落ち。「結果が出なかったから。いい選手が使われる。それがプロ」。逆襲への思いを胸に、鳴尾浜でひたむきに汗を流した。6日の再昇格後、この日の代打安打が初安打。1軍で生き残るためにも、1本では終われなかった。

6回に右翼席上段へ3号ソロ。「強く振る意識で。狙い通りのスイングができて完璧でした。気持ちの面でも体の面でもいい準備ができていた」。約3カ月ぶりのアーチに、心地よくダイヤモンドをまわった。5回の二塁守備では京田の二遊間への打球に反応し、好プレーでアウトにしていた。攻守で輝きを取り戻したルーキーについて、矢野監督は「ラッキーボーイ的な存在になってくれた。こういう姿を見せられたら、こっちも使わなあかんとなってくる」と今後のスタメン起用も示唆した。

お立ち台で、イケメンは胸中を赤裸々に明かす。「ずっと苦しんでたけど…。気持ちは切らさずにしっかり準備してきた。なんとか1勝でも多く勝ってAクラスにいきたいと思います!」。酔いしれる一打を、また約束した。【真柴健】

▽阪神浜中打撃コーチ(木浪について)「木浪も試合に出られず、悔しい思いをしていた。聖也が流れを変えてくれた。あの本塁打が大きかった」

▼阪神の5回の6者連続安打は、昨季9月6日広島戦5回の6連打以来で、今季最長。1イニング5得点は、今季6月4日ロッテ戦9回の5点以来(今季の1イニング最多得点は6月2日広島戦2回の「7」)。阪神は8月12日中日戦2回から、今季最長の24イニング連続無得点を続けていたが(それまでのワーストは6月29日中日戦8回~7月2日DeNA戦9回の22イニング)一気に借りを返した。