いざ、決戦! 広島は6・5ゲーム差をつけられた首位巨人との27日からの3連戦に必勝ローテで臨む。大瀬良大地投手(28)の登板間隔を中5日に繰り上げ、3戦目に起用することが濃厚となった。佐々岡真司投手コーチ(52)は「ムチを入れるとき」と非常事態宣言。1戦目ジョンソン、2戦目野村に続き、3連勝を狙う。キーマンとなる大瀬良が前カードで見せた投球術の、極意に迫った。【取材・構成=村野森】

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大瀬良が投球術を見せつけたのは23日中日戦。0-0の2回2死一、三塁で8番加藤を迎えた場面だった。本来なら8、9番で1アウトを取ればいい「ニコイチ」の場面。だが試合の流れを左右する場面と判断し、全力で抑えにいった。

大瀬良 次の回に調子のよさそうな1番大島さんから始められるより(9番の投手で)1アウトを取ってから大島さんを迎えたほうがいいと思いました。

極意1「テンポ」 セットポジションの静止時間(かっこ内)を変え、加藤のリズムを崩しにかかった。

1球目(3・9秒) 内角直球 146キロ 見逃しストライク

2球目(4・9秒) 外角低めカットボール 138キロ ボール

3球目(3・8秒) 外角低めカットボール 140キロ ボール

4球目(7・8秒) 内角高めカットボール 139キロ 空振り

5球目(3・5秒) 内角高め直球 143キロ 空振り三振

ポイントは4球目。2-1のバッティングカウントで、普段の倍の時間静止した。あえて甘めを狙って打たせて取ろうとしたカットボールは内角高めに抜け、その分変化は小さくなったが、じらされていた加藤は空振りした。

極意2「錯覚」 高めに抜けた4球目の残像を利用し、5球目はやや高めの同じコースに143キロの直球を配した。途中まで同じ軌道で、そこからグッと伸びる球。しかも、セットでの静止は5球中最も短い3・5秒だった。加藤は振り遅れ、空振り三振に倒れた。

大瀬良 僕の中では(4球目は)めちゃ長く止まった。これ以上止まっていたら投げ方がギクシャクするというくらい。5球目は、その前のボールのイメージを使って(直球で)差し込めるかなと思いました。

捕手会沢 得点圏に走者を置いて同じようなテンポで投げると(タイミングを)合わされやすくなるし、ヒットコースに飛びやすくなる。(4球目の長い静止は)大地の技ですよ。

加藤 追い込まれてから右方向を狙った。投球テンポはわかりませんが、球界を代表するピッチャーに素晴らしいボールを投げられたという印象です。

テンポ、コース、球種、相手の心理をコントロールし、自らの“失投”さえ利用する。試合は6回に逆転され敗れたが、研ぎ澄まされた感覚は不変だ。大瀬良は次戦に向け「持っている引き出しを使いながら勝ちにつながる投球をしたい」と意気込んだ。中5日で臨む巨人戦も、技術と感覚をフル回転させ勝ちにいく。