山賊がついにタカを追い詰めた! 2ゲーム差で迎えた首位攻防第1ラウンドを西武が制した。2-2で迎えた7回に森友哉捕手(24)が、ソフトバンク千賀の初球を左翼スタンドへ運ぶ決勝の20号2ラン。最大8・5あったゲーム差は、ついに1。秋の美酒へ、山賊たちの宴が始まった。

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スタンドの声は届いていた。接戦にもつれ込み、同点で迎えた7回。森はソフトバンク千賀の初球、外角高めの151キロ直球を左翼スタンドへ運んだ。20号決勝2ラン。森劇場と化したメットライフドームは、史上最速での観客動員150万人に達したばかりだった。「三振はしたくない。追い込まれたらほぼ勝算はない。追い込まれる前に打とうと、試合前から思っていた」。4打席目で仕留めた。

ムードは漂っていた。直前の7回1死一、三塁での守備。牧原の三遊間へのゴロを三塁中村が横っ跳びで好捕して2死。なお二、三塁のピンチでマウンドに立った19歳の平良には「頑張れ」と声をかけてミットを構え、内角へのサインを立て続けに送った。最速158キロの右腕を強気にリードし、内川を二ゴロに仕留めてピンチを脱出。その直後の攻撃で出た1発。先輩に助けられ、後輩を生かし、舞台は整っていた。

原点に立ち戻って、首位打者を走り続けている。今季からバットをプロ1年目の形に戻していた。ゼット社の長さ33・5インチ(約85センチ)、重さ880グラム。材質は柔らかめのホワイトアッシュではなく、硬めのメープルに変更した。森は「バットを折らないで、できるだけ同じバットを長く使いたいというのがあった。実際に折れる数は減ったと思う。その方が同じ感覚のままいられるので」。相棒を変えることなく打率3割3分7厘。3戦連発中と感覚は研ぎ澄まされるばかりだ。

追われる立場を知るからこそ、追う勢いも増していく。これで首位ソフトバンクと1ゲーム差。独走だった昨季と比べ「追われるより、追う方が少しは楽。去年みたいにビクビクしているわけじゃない。いい雰囲気で臨めている」とプレッシャーをかける。首位攻防戦は、ホームであと2ラウンド。すぐ目の前を飛ぶタカに、山賊たちが襲いかかる。【栗田成芳】

西武辻監督(森の勝ち越し2ランに)「天才です。打った瞬間だった。見事」