ソフトバンク千賀滉大投手(26)が史上80人91度目、育成選手では初のノーヒットノーランを達成した。

ロッテ22回戦(ヤフオクドーム)で、史上初の毎回奪三振で快挙をアシスト。ホークスでは1943年(昭18)の別所昭(後の毅彦)以来、76年ぶり2人目の偉業だ。自身3連敗中だったが、茶髪を黒に染め直して復活の12勝目。西武が勝ったため優勝マジック点灯は再びお預けとなったが、3年連続日本一へ最高の弾みをつけた。

   ◇   ◇   ◇

最後は千賀の代名詞、お化けフォークだった。9回2死一、三塁。1ボール2ストライクから外角へのフォークで井上を空振り三振。ノーヒットノーランを達成、甲斐と抱き合って喜んだ。リードは2点。本塁打を浴びれば逆転を許すピンチをつくったことで、逆に冷静になれた。優勝を争う大事な一戦も工藤監督は「記録に挑むことはなかなかできることではない。彼に9回は託すと決めていた」と腹をくくっていた。

千賀は「5回にまだ(被安打が)0か。あと4回全力で抑えようと」と早い段階から意識した。チームメートたちは、あえて千賀に「ノーヒット」の言葉をかけるのを我慢。「みんながすごい、そのワードを出さないから逆に僕が笑いそうになった。2点差の引き締まった試合だったのでできたんじゃないか」とナインの優しさを感じていた。

自身3連敗中だった。「こんなんじゃエースなんかじゃないですって」と、チームが連勝する中、もどかしい思いでいっぱいだった。茶色になっていた髪も黒く染め直していた。

この日朝、甲斐からLINE(ライン)が届いた。「今日はお前のために頑張るから。その気持ちに応える気持ちで投げてくれ」。10年育成ドラフト同期の甲斐との育成バッテリーで大きく成長してきた。「うまく緩い球をと、スラーブをしっかり使った」。カットボールでもフォークボールでもなくドロンと斜めに曲がる球で8回にこの日最速の159キロを出した直球と緩急をつけた。どんなワンバウンドでも止めてくれると甲斐を信じて投げた。

2人だから言いたいことが言える。8月23日のZOZOマリンでのロッテ戦では、ベンチの端で大声で言い合い、隣でカメラマンたちがケンカが起きたのかと心配するほどだった。4戦ぶりの白星でチームトップの12勝目を挙げた。工藤監督は「1年を通して試合の中での立ち居振る舞いなどが変わってきている」と、精神的な成長を認める。メジャー関係者の熱い視線も常に集める。12奪三振で今季目標にしていた200を超える205三振を記録。不調のトンネルを抜けたエース千賀が、3年連続日本一へ導く。【石橋隆雄】