逆転でのクライマックスシリーズ(CS)進出を目指す阪神が、3位広島3連戦で痛恨の負け越しを喫した。矢野燿大監督(50)は必勝パターンのラファエル・ドリス投手(31)を来日200試合目で最短の5回に投入したが、手痛い失点。

打線も食い下がり、8回に2点をかえしたがあと1点届かなかった。広島と再び3・5差に開いたばかりか、5位の中日が0・5差に接近。勝負手不発で虎が崖っぷちに追い込まれた。

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天国か地獄の分かれ目で阪神は白星を引き寄せられない。痛恨の1敗だった。CS進出圏内の3位広島とのゲーム差は「1・5」に迫れず、再び「3・5」に広がった。残り15試合。厳しい状況に追い込まれた。三塁側ロッカー裏で矢野監督は悔しさを押し殺した。

「どんな形であれ、勝ちたい、最低でも勝ち越しをして帰りたいのはあった。まあ、それはもちろん、総力戦になるのは、もう試合前から思っていた」

言葉通り、指揮官は攻めダルマに徹する。継投も攻撃的だった。2点ビハインドの5回、マウンドに現れたのはドリスだった。直前、先発岩貞に代打を送る。必勝パターンの一翼を担う剛腕を早くも投入。だが前倒し継投は裏目に出た。長野を追い込んだ直後、一塁走者菊池涼にモーションを盗まれる。ドリスが気づいたときはすでに遅し。緩く本塁に投球するしかない。

2死二塁。松山に内角低め速球を打たれ、ライナーで右前へ。勝敗を分ける1点は広島に入り、3点差に拡大。流れは敵へと傾いた。ドリスが「次、頑張ります」とうなだれ、矢野監督も「一番、勝てる方法を探したらそうなった」と意図を明かす。普段は7、8回の登場が多いドリスの5回登板は来日4年目、通算200試合目で初めて。2番菊池涼からの上位打線。手ごわいラインアップを見据えて勝負手を繰り出したが不発だった。逆に傷口は広がり、旗色が悪くなった。

劣勢の終盤も、リード展開の救援陣が出てくる。岩崎、ジョンソンも力投したが、報われなかった。必死に戦っても広島に力及ばず。1回はセーフティーバントで出塁した近本に続いて福留も敢行。意表を突く三塁前のバントは犠打になったが先制できなかった。指揮官は言う。「(ジョンソンは)すごい調子が良い感じには見えなかった。だから、早い回で何とか1点でも取りたかった」。目の上の敵に負け越し、5位中日も0・5差に肉薄する。いよいよ敗北が許されない苦境に陥った。【酒井俊作】

▽阪神金村投手コーチ(5回のドリス投入に)「岩貞を4回で代えたら、5回からドリスで行かないといけない。計算ずく。4回2死から、ドリスに準備させていた。今日は(藤川)球児以外、空いていた。どんどんつぎ込める展開だった」