チャンスメークに徹底した。阪神木浪聖也内野手(25)が2安打を放ち、先頭打者としての役割を果たした。

「1番として塁に出たのはいいこと。初回、大事なので。強い気持ちで臨めています」

まずは初回だ。ヤクルト先発高橋の7球目。フルカウントから内角146キロ直球を捉えて左前に運んだ。今季85安打目を放った社会人卒のルーキーは一塁ベース上で左拳をあげた。木浪が塁上で感情を表すシーンも板についてきた。

4回には同点の足がかりを作った。先頭で打席に入ると、内角にきた3球目の134キロフォークを流した。無風の甲子園の夜空に舞う白球は、どんどん伸びて左翼フェンス直撃。バレンティンが打球処理にもたつく間に、一気に三塁へ向かった。中継プレーの乱れもあり、スライディングした際に三塁手と交錯。セーフにはなったが、足を負傷。数秒間は起き上がることができなかった。矢野監督も一塁側ベンチから、心配そうな表情で駆けつけた。立ち上がり右足のレガースを外すも、屈伸ができずベンチへ。治療を終えると、歯を食いしばって再びグラウンドへ。残りは14試合。背番号0は気迫でプレーを続行した。

これで今季86安打。目標とするシーズン100安打まで、あと14本とした。71年ぶりの快挙にも手が届きそうだ。阪神の新人選手2人がシーズン100安打以上を放てば、48年の後藤次男(129本)、別当薫(114本)以来71年ぶり。近本はすでに142本放っており、記録達成は木浪のバットにかかっている。「記録もそうですけど、勝利につながる1本が打ちたい」と常々、話す、頼もしいルーキーは逆転CSを諦めない。【真柴健】