主砲が悪夢を振り払って、優勝マジック9を再点灯させた。巨人岡本和真内野手(23)が、逆転の27号2ランを含む今季3度目の1試合2発で勝利に導いた。1点を追う6回2死一塁、今永から左中間席上段への特大弾。

2点リードの8回2死ではエスコバーから左中間席に運んだ。昨年9月14日の横浜スタジアムでのDeNA戦。右手に死球を受け、小指を骨折した。脳裏に残る恐怖心に打ち勝ち、5年ぶりの優勝へ、大きな1発を刻んだ。

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真ん中低めのチェンジアップに踏み込み、豪快にバットを振り抜いた。岡本は一瞬、左中間席上段へと描かれた放物線に視線を送った後、右手からサラッとバットを離し、ゆっくり走りだした。「何とかしようと。うまく反応できた」。1点を追う6回2死一塁。これぞ4番の27号2ランで逆転し、2点リードの8回2死にも左中間席へ。2打席連発の28号ソロで勝負を決めた。

体に刻まれた悪夢とも闘った。昨年9月14日の横浜スタジアムでのDeNA戦。パットンから右手に死球を受け、負傷交代した。新たなシーズンが幕を開けた今年4月5日からの今季初の同球場での3連戦前。「死球ですか? 全然、大丈夫です」と言ったが、体は正直だった。11打数無安打。チームも負け越した。

岡本 自分では意識してなかったつもりでしたけど、少し腰が引けたようなバッティングでした。全然、ダメです。

試合前の時点で25打数4安打(打率1割6分)、1本塁打と鬼門だった。あれから5カ月、逆転2ランの直前、次打者席で「回ってこい、回ってこいと思った」と恐怖心を打破。2発目もエスコバーの内角155キロ直球にしっかり踏み込んだ。シーズン佳境の大事な時期に今季3度目の1試合2発で悪夢と決別した。

主砲の未知なる魅力に、原監督は「ああいう場面でチェンジアップをホームランにするというのがすごいというのか、僕として物足りないというかね。計れないところ。本来なら四球の後の真っすぐをカーンというならね。まぁ、彼流なんでしょう」と語った。

ちょうど1年前、死球が右手に当たった直後、「親指が痛いなと思ったですけど、(骨折したのは)小指だったんです」。自分自身も計りかねぬ魅力にあふれる主砲の2発で2位DeNAに勝利。チームはマジック9を再点灯させた。「僕は初体験なのであまり気にせず、1試合1試合頑張りたいです」。プロ5年目での初優勝に向け、決意を込めた。【久保賢吾】