昨季リーグ王者の西武が、今季130試合目で初めて首位に立った。

0・5差で追う首位ソフトバンクとの首位攻防第1戦。両軍無得点で迎えた3回2死満塁の好機で、3番森友哉捕手(24)が走者一掃の適時二塁打を放った。満塁で無類の強さを誇る山賊打線の中軸が、攻守でチームをけん引した。12日、勝つか引き分ければ連覇へ向けてのマジックが点灯する。

   ◇   ◇   ◇

大一番で闘魂がバットに乗り移った。森は3回2死満塁の場面で、121キロのシンカーを強振した。右翼線へ強い打球を放ち、走者一掃の3点適時二塁打。「きた球を打とうと思った。球種は全部頭に入っているけど、当たると思った球にバットを振る。大事な一戦で大きなチャンスで回してもらったので気合が入りました」と初球、低めの悪球打ち。首位攻防最終ラウンド第1戦で、強烈な先制パンチを食らわせた。これがV打となり、チームは今季初の首位に浮上した。

満塁男は、おかわりだけじゃない。7回の満塁では空振り三振だったが、満塁時は13打数7安打で打率5割3分8厘、28打点、出塁率6割5分を誇る。驚異的な強さはマインドにある。「割り切りました。打てなかったら1死満塁で点が入らなかったゲンさん(前打者の源田)のせいだと思って」とニヤリ。数字がすべてを物語り、打率と出塁率は、満塁弾通算20本の中村を上回る。勝負強さは負けていない。

ここ1カ月、試合後はおそるおそるスマホをのぞく日々が続いていた。首位打者を走るがオリックス吉田正から猛追を受ける。「毎試合ドキドキしながら吉田さんの結果を見て、しっかり落ち込んでいます。プレッシャーしかない。追う立場でいたいので、追われる立場は嫌ですね」。その言葉にウソはない。だからこそチームとしてソフトバンクに猛プレッシャーをかける。首位浮上で追われる立場となり「またビクビクするんじゃないですかね?」という言葉とは裏腹に、顔は不敵に笑っていた。

昨オフに炭谷がFA移籍で抜け、正捕手としてマスクをかぶる。「1日ヒット1本四球1個がテーマ。守りは守り、打撃は打撃。違うスポーツと思ってやっている。その部分で切り替えができている」。好リードで1失点継投。山賊打線では中軸として、守備では扇の要。リーグ連覇へ向けて、今の西武にはドッシリと構える森がいる。【栗田成芳】

▽西武山川(8回1死一、二塁から貴重な追加点となる中前適時打)「コンパクトにコンパクトに、と考えた。まだソフトバンクが首位だと思っているので、今まで通り必死に食らい付いていくだけです」