ソフトバンクが優勝マジック12を点灯させた。エース千賀滉大投手(26)が8回1失点の好投で13勝目を挙げ、1日で西武から首位を奪還。

甲斐との育成バッテリーで山賊打線をねじ伏せた。6日ロッテ戦でノーヒットノーラン。ノーヒッターが次の登板でも白星を挙げたのは、パ・リーグでは96年渡辺久(西武)以来23年ぶり。エースの熱投で勢いをつけたソフトバンクが、残り12試合で一気にリーグVへ駆け抜ける。

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負けられない一戦で、千賀が初回から圧倒的な投球を見せた。「自分の調子がいいとか悪いとかではなく、絶対に負けないという気持ちでマウンドに上がりました」。6日ロッテ戦でのノーヒットノーランの勢いのまま、4回まではパーフェクト投球。5回に栗山に14イニングぶりの安打を許したが、落ち着いて後続を断った。

0-0の7回、1死二、三塁のピンチでは、栗山をカウント1-2と追い込むとお化けフォークを4連投で空振り三振。「あそこは外野フライでも点を取られる。三振を狙って、取れてよかった」と狙い通り。続く外崎も、最後はフォークでハーフスイングの空振り三振に仕留めた。甲斐は「17年から2人でバッテリーをやっている。一番いい球を求めた。そらすことはない。お互い悔いが残らない球をサインで出しました」。どんなワンバウンドでも体を張って止める、以心伝心の育成バッテリーだからできた投球だった。

序盤から、味方打線は何度もチャンスをつくった。それでも先制できなかった。だが、千賀は「いい意味で試合に入ることがない。チャンスとか流れとか考えずにやりました」。8月30日の敵地での西武戦では、4失点で敗戦投手になった。「あの時は集中力に波があった」と反省し、試合の流れやチーム状況に左右されないように自分の投球だけに集中した。

昨年の同じ時期、メットライフドームで手痛い敗戦を喫した。18年9月15日、3・5ゲーム差の2位で挑んだ初戦。5回持たず、7失点でKOされた。打線が1点差に追いついた5回、浅村に3ランを左翼席にたたき込まれた。千賀は「浅村さんが一番いい打者。何を待っているのか分からない。反応で持っていかれる。(西武の)ほかの打者はこうすればというのはある」と話す。強力山賊打線だが、苦手の浅村が抜け、きっちり攻めれば抑えられるという思いで今季は対戦してきた。

工藤監督は「すごかった。大きな試合でよく投げた」とエースを絶賛した。残り12試合でマジック12が点灯した。「(西武と)どっちが我慢できるかがすごく大事。ひとつも負けられない」と勝利監督に笑顔はなし。最後まで混戦を覚悟し、リーグV奪回へ、気を引き締めた。【石橋隆雄】

▽ソフトバンク王球団会長 しびれたね。千賀がよく放ってくれたし、甲斐もよく守ってくれた。首位攻防戦にふさわしい試合だったね。

▽ソフトバンク倉野投手コーチ(千賀の投球に)「(6日ロッテ戦の)ノーヒットノーランの時よりも1球、1球の精度はよかった。今日も1人も走者を出さないくらいの気持ちでいくようには話しはした」