自力クライマックスシリーズ(CS)進出の可能性が再消滅した悔しい敗戦の中、阪神のドラフト1位、近本光司外野手(24)が新たな快挙を刻んだ。

3回に中前安打で出塁後、二盗に成功。今季30盗塁となり、セ・リーグ新人では6人目、球団では2人目の大台到達となった。バットでも今季12度目の猛打賞。こちらは新人5位タイの記録をマーク。58年巨人長嶋茂雄のセ・リーグ新人153安打、14度のNPB猛打賞記録更新が見えてきた。

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ため息交じりの甲子園にも希望の光はある。近本が足で、バットで存在感を示した。

まずは3点を追う3回。1死走者なしからヤクルト先発山田大の直球を中前に運んで出塁。続く3番福留の初球、果敢にスタートを切った。30盗塁成功。相手捕手は、リーグトップの27の盗塁を刺している中村からだった。盗塁部門1位、山田哲(33盗塁)の目の前で、その差を3に縮めた。「3点差あったんですけど、しっかり自分のスタートを切れれば良いかなと思っていた」。成功率100%の山田哲とは対照的に、新人らしく企図数にこだわる。「失敗も多いけど、その分、走っているということ」。14度の盗塁死も、確かな経験となっている。

新人30盗塁は球団で2人目、リーグでも6人目。ともに、近本が入団当初から憧れと語る01年赤星憲広以来となった。節目の数を走り「大きい壁は越えられたかなと思います」。自慢の足で稼いだ快挙となった。 バットでもともしびは消さない。5回の第3打席に中前安打、7回の第4打席に遊撃への内野安打を放ち、8月4日広島戦(マツダスタジアム)以来、30試合ぶりの猛打賞を記録。今季12度目。こちらは14度でNPB新人記録の58年巨人長嶋まであと「2」に迫った。

球団新人記録を塗り替えている安打数は、一気の加速で146本まで数字を伸ばした。シーズンは残り12試合。リーグ新人記録2位の17年中日京田(149本)まであと3本。こちらもトップに立つ58年巨人長嶋(153本)の記録更新にもグッと近づいた。

ただ、試合は大差の敗戦。自力CS進出の可能性も再び消滅した。「僕の打席は得点にもつながっていない。(本塁に)かえってこれなかったということ、一番大きな仕事ができなかったなと思います」と、悔しそうに振り返った。

それでも、まだ戦いは終わったわけではない。最後の最後までチーム一丸となって走り抜く。「残り12試合。1つでも多く、チームのために走っていけたらいいかなと思います」。数々の記録を打ち立て続ける背番号5は、決して諦めてはいない。虎を引っ張るルーキーの輝きが、必ず道しるべとなる。【奥田隼人】

▽阪神筒井外野守備走塁コーチ(近本の30盗塁について)「初球からいけたので。あと12試合、自分のやれることをどんどんチャレンジしていって欲しい」